LPを作り直す前に:データで見る改善順序の決め方
「LPのデザインが古いので、そろそろ作り直しませんか」。制作会社や社内からこんな提案が出て、数十万〜数百万円の見積もりを前に判断を迫られている。広告の成果が伸び悩んでいる時期ほど、この提案は魅力的に見えます。新しいLPにすれば数字も変わるはずだ、と。
ところが実務では、全面リニューアル後にCVR(コンバージョン率)が下がったという相談が珍しくありません。作り直し自体が悪いのではなく、「何が悪くて数字が出ていないのか」を特定しないまま全部を変えてしまうことが問題です。先に結論を言うと、順序は「データで詰まり箇所を特定する→部分改修で直す→それでも構造的に無理なら作り直す」です。全面リニューアルは最初の選択肢ではなく、最後の手段に置くのが安全です。
この記事の要点
- 全面リニューアルは「勝っていた要素」まで消すため、数字が悪化するリスクを常に伴う
- 作り直しの前に、流入との一致・ファーストビュー・フォーム・表示速度の4点をデータで確認する
- 改善は「影響の大きさ×工数の小ささ」で順序を決め、部分改修から始める
- 作り直すなら旧LPと並走させ、計測を引き継ぎ、比較できる状態を残す
1. 全面リニューアルで数字が落ちる典型パターン
まず、なぜ「良かれと思った作り直し」が逆効果になるのかを押さえます。診断の現場でよく見るのは次の3パターンです。
1つ目は、勝ち要素の喪失です。古いLPでも、実は「一番上の訴求文」や「お客様の声の位置」など、CVRを支えていた要素があります。全面リニューアルはこれを特定しないまま全部を入れ替えるため、デザインは良くなったのに刺さらないLPができあがることがあります。何が効いていたか分からないので、戻すこともできません。
2つ目は、計測の断絶です。URLの変更やフォーム構造の変更に伴って、コンバージョンタグやイベント計測が引き継がれず、リニューアル直後から「コンバージョン(CV)がゼロに見える」事故が起きます。実際にCVが減ったのか計測が壊れたのか切り分けられず、検証不能な期間が生まれます。
3つ目は、検証設計の欠如です。デザイン・訴求・フォーム・構成を同時に変えているため、数字が上がっても下がっても理由が特定できません。次の改善につながる学びが何も残らない、という意味で、成功しても失敗しても損をしている状態です。
実例を1つ挙げます。BtoBサービスのLPを全面リニューアルした会社で、公開後3週間のCVが前月比で4割減りました。調べていくと、原因は2つ重なっていました。旧LPで一番上に置いていた導入企業のロゴ一覧が、新デザインでは中段以降に移っていたこと。そしてサンクスページのURLが変わり、Google広告のコンバージョンタグが発火しなくなっていたことです。前者は実際の減少で、後者は計測の欠落でした。両方が同時に起きていたため、どちらがどれだけ効いているのかの切り分けだけで2週間を使っています。
2. 作り直す前に見るデータ4点
提案を受けたら、まず現状のLPがどこで詰まっているのかをデータで確認します。見るべきは次の4点です。いずれもGA4とヒートマップツール、広告管理画面でおおむね確認できます。
流入とLPの一致
広告の検索語句レポートとLPの訴求を突き合わせ、クリックした人の期待とLPの内容がずれていないかを見ます。「格安」で集客して高級感を訴求するLPに落とす、といったずれは、LPの出来以前の問題です。ここがずれていると、どれだけLPを磨いても直帰は減りません。
ファーストビューの離脱
スクロール計測やヒートマップで、ファーストビューから先に進んだ人の割合を見ます。LPによっては訪問者の半分前後が最初の画面で離脱することもあると言われます。ここの数字が同業の他LPや自社の過去実績と比べて極端に悪い場合、問題は「LP全体」ではなく「最初の1画面」に集中しています。
フォーム到達率と完了率
「LPが悪い」と言われるケースの相当数は、実はフォームの問題です。フォームに到達した人のうち何%が送信を完了しているかを分けて計測します。到達率が低いなら本文と導線の問題、到達しているのに完了率が低いならフォームの問題(EFO領域)です。どちらなのかで打ち手はまったく変わります。
デバイス別の数値と表示速度
デバイス別にCVRを分解し、スマートフォンだけ極端に悪くないかを確認します。あわせてPageSpeed Insightsなどで表示速度を測ります。表示に数秒かかるLPは、内容の議論以前に読み込み中の離脱で数字を落としていることがあります。
速度の判定はCore Web Vitalsの3指標が物差しになります。Core Web Vitalsとは、ページの読み込み・応答性・表示の安定性をユーザー体験の側から測るGoogleの指標群のことです。2026年8月時点で「良好」とされる基準は、主要な要素が表示されるまでの時間を測るLCPが2.5秒未満、操作への反応の速さを測るINPが200ミリ秒未満、表示中のレイアウトのずれを測るCLSが0.1未満です(ページ読み込みの75パーセンタイル値で、モバイルとパソコンを分けて判定)。PageSpeed InsightsにLPのURLを入れると、実際の訪問者の計測にもとづくフィールドデータと、その場で計測したラボデータの両方が出ます。判断材料にしたいのはフィールドデータの方です。Search Consoleの「Core Web Vitals」レポート(従来「ウェブに関する主な指標」と呼ばれていたもの)でも、URLグループ単位で基準を満たさないページ数を追えます。
ここで見落とされがちなのは、遅さの原因が「LPそのもの」ではなく「後から足したタグ」にあるケースが多いことです。チャットツール、ヒートマップ、複数媒体のリマーケティングタグ、A/Bテストツール。1つずつは軽くても、10個並べば初回表示は体感で1秒以上遅くなります。作り直しの見積もりを取る前にGTMのプレビューモードで読み込まれているタグを数えてみると、費用をかけずに片付く改善が見つかることがあります。
現状の数字をそろえる:確認の順番と所要時間
4点の確認は、慣れていれば半日かからず一巡できます。開く画面と目安の時間を書き出しておきます。
- 広告側 Google広告の左メニュー「キャンペーン」から検索語句のレポートを開き、上位30語とLPの見出しを並べて読む。目安20分
- GA4 「レポート」の「エンゲージメント」から「ページとスクリーン」を開き、LPのURLで絞って表示回数・平均エンゲージメント時間・キーイベント数を控える。目安20分
- ヒートマップ ファーストビューの通過率とCTAボタンのクリック率を、スマートフォンとパソコンで別々に控える。目安30分
- フォーム フォーム表示のイベントと送信完了のイベントを比べ、到達率と完了率を出す。イベントが未設定なら、この機会に仕込む
- 速度 PageSpeed InsightsでスマートフォンのフィールドデータのLCPとINPを控える。目安10分
この5行が埋まった一枚のメモが、制作会社との議論の土台になります。「なんとなく古いから」ではなく「スマートフォンのファーストビュー通過率が38%で、パソコンの61%と差が大きい」と言えると、返ってくる提案の中身も変わってきます。
3. 改善順序の決め方:影響×工数のマトリクス
4点の確認で詰まり箇所が見えたら、改善の順序を決めます。判断軸はシンプルに「数字への影響が大きい順」かつ「工数が小さい順」です。実務では、おおむね次の順序に落ち着くことが多いです。
- 広告とLPのメッセージ一致の修正:ファーストビューの見出しを広告文・検索語句に合わせる。テキスト修正だけで済むことが多く、工数最小で影響が大きい筆頭候補です。
- ファーストビューの改善:見出し・権威付け・CTAボタンの1画面を作り替える。1セクションの改修で、全体リニューアルの数分の一の工数です。
- フォームの改善:項目削減、エラー表示、入力補助。CVの直前の詰まりなので、改善が数字に直結しやすい領域です。
- 本文構成・コンテンツの改修:事例の追加、比較表、FAQなど。効果はありますが、上の3つより後で構いません。
ポイントは、1回の改修で変える要素を絞り、前後の数字を比較できる形で進めることです。順番に直していくと、「作り直さなくても十分だった」という結論に至るケースがかなりの割合であります。逆に、ここまでやっても数字が動かないときに初めて、次のセクションの判断に進みます。
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4. 部分改修の効果をどう確かめるか
部分改修は「直したつもり」で終わりやすい領域です。確かめ方の型を先に決めておくと、次の改修の精度が上がります。着手前に3つだけ決めます。
1つ目は比較期間です。CVが月20件のLPを1週間だけ比べても、差が偶然かどうかは判断できません。粗い目安として、改修の前後それぞれで30件前後のCVがたまる期間を確保します。月20件なら6週間、月100件なら10日ほどの計算です。曜日の構成をそろえるため、期間は7日単位で区切ると比べやすくなります。
2つ目は、同時に変える要素の数です。ファーストビューの見出しとフォームの項目を同じ日に変えると、どちらが効いたのか分からないまま結果だけが残ります。制作の都合でまとめて公開せざるを得ない場合も、「見出しは第1週、フォームは第3週」のように反映日をずらす余地はないか確認してみてください。
3つ目は記録です。変更日・変更内容・担当者を1行ずつスプレッドシートに残し、GA4の注釈やGoogle広告のメモにも同じ日付を入れておきます。半年後に数字が動いた理由をたどるとき、この一行があるかないかで調査時間がまるで違います。
ツールでA/Bテストを回せる環境なら、期間比較より並行テストの方が精度は上がります。ただしトラフィックの少ないLPでは決着まで何か月もかかるため、月のセッションが数千に届かないうちは期間比較で十分だと考えています。判定に時間がかかりすぎるテストは、待っている間に季節要因や競合の動きが混ざり、結局なにも分からない結果に落ち着きがちです。
5. それでも作り直すべきケースと、その時の守り方
部分改修では対応できず、全面リニューアルが妥当なケースももちろんあります。判断の目安は次の通りです。
- 訴求の前提が変わった(ターゲット・価格・商品構成の変更で、直しても骨格が合わない)
- 技術的負債が重い(古い制作ツールで部分修正のたびに高額な費用がかかる、スマートフォン対応が構造的に不十分、速度改善の限界)
- ブランド刷新など、事業側の都合でデザイン変更が決まっている
3つのうち1つでも当てはまるなら作り直しを検討する価値がありますが、どれにも当てはまらず「デザインが古い」だけが理由なら、部分改修に戻るのが妥当です。作り直すと決めた場合も、数字を落とさないための守り方が3つあります。
- 旧LPを即座に閉じない:広告の一部トラフィックだけ新LPに向けて並走させ、CVRを比較してから切り替えます。万一新LPが負けても被害が限定されます
- 計測を引き継ぐ:コンバージョンタグ、GA4イベント、フォームのサンクスページURLを公開前にテスト環境で検証し、公開当日にテストCVを流して確認します
- 旧LPの勝ち要素を移植する:ヒートマップでよく読まれていたセクションや、CVした人がよく見ていた要素は、新デザインでも意図的に残します
6. 稟議の前に確認するチェックリスト
最後に、リニューアルの意思決定前に確認したい項目を一覧にします。社内稟議や制作会社との打ち合わせの前に、このリストを埋めてみてください。
- 現LPのCVR・フォーム到達率・完了率を数字で言えるか
- 詰まり箇所がどのセクションか、データで特定できているか
- その詰まりは部分改修で直せないか、見積もり比較をしたか
- リニューアルの目的が「数字の改善」か「デザインの刷新」か、社内で合意があるか
- 新旧比較のテスト計画と、計測引き継ぎの手順が見積もりに含まれているか
- 公開後に効果検証する指標と期間を決めているか
半分以上が埋まらない状態での全面リニューアルは、率直に言って賭けに近くなります。逆にすべて埋まっているなら、作り直しはむしろ合理的な投資です。LPの良し悪しは見た目の新しさではなく、流入からCVまでの詰まりの少なさで決まります。判断の物差しをデザインの印象からデータに移すことが、この記事で一番お伝えしたいことです。
よくある質問
Q. LPの部分改修と全面リニューアルは、費用対効果でどれくらい違いますか?
A. 一概には言えませんが、ファーストビューやフォームの部分改修は全面リニューアルの数分の一の費用で済むことが多く、数字への影響はCV直前の詰まりを直す分だけ大きく出やすい傾向があります。まず部分改修で検証し、学びを持って全面リニューアルに進む方が、同じ予算でも失敗の確率を下げられます。
Q. リニューアル後にCVRが下がった場合、どれくらいの期間で判断すべきですか?
A. まず計測が正しく引き継がれているかを最初の数日で確認してください。計測に問題がなければ、CV数にもよりますが2〜4週間程度の比較で傾向は見えてきます。明らかに旧LPが勝っている場合は、意地にならず旧LPへ戻す判断も選択肢です。並走テストの形にしておくと、この判断が格段にしやすくなります。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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