広告のCVRが低いのはLPが原因か:広告側とLP側を切り分けるチェック手順
「クリックは取れているのにコンバージョンにならない」。広告運用の相談で最も多い悩みのひとつです。このとき多くの人は反射的に広告の管理画面を開き、キーワードや入札を触り始めます。ところが数週間いじっても改善せず、あとから調べたらLPのフォームがスマホで崩れていた、という笑えない話は実際によくあります。
コンバージョン率(CVR)は「誰を連れてくるか(広告側)」と「来た人をどう受け止めるか(LP側)」の掛け算で決まります。どちらに詰まりがあるかを先に切り分けないと、打ち手の半分は的外れになります。この記事では、広告側とLP側のどちらに原因があるかを、管理画面とアクセス解析の数字で切り分ける手順を、実務でやっている順番のまま整理します。
この記事の要点
- CVR低下の原因は「流入の質(広告側)」と「受け皿(LP側)」に分けて順番に潰す。最初に見るのは検索語句
- 指名キーワード比率の変化はCVRを大きく動かす。平均値でなく内訳で見る
- LP側はまず「フォーム到達率」と「フォーム完了率」の2段階に分解する。どちらが低いかで打ち手が変わる
- デバイス別・流入元別で差が大きい場合、原因は広告よりLP側にあることが多い
1. 前提の確認:そのCVR、そもそも正しく測れているか
切り分けを始める前に、30分だけ計測の確認に使います。CVRが「低い」のではなく「低く見えている」だけのケースが一定数あるからです。
チェックするのは3点です。第一に、コンバージョン(CV)タグが実際に発火しているか。テスト送信をして、Google広告とGA4の両方で計上されるかを見ます。第二に、計測の重複や欠落がないか。サンクスページのリロードで二重計上されたり、別ドメインのフォームで計測が切れたりしていないか。第三に、比較している期間の条件が同じか。計測仕様の変更やCVアクションの定義変更をまたいで比較していると、CVRの増減はただの定義変更かもしれません。
ここが崩れていると以降の切り分けがすべて砂上の楼閣になるので、面倒でも最初に確認します。計測が怪しい場合の詳しい手順はコンバージョンが計測されない時の原因の切り分け手順に譲ります。
2. 広告側に原因があるパターン:流入の質を数字で見る
検索語句レポート:意図のズレた流入が増えていないか
最初に開くのは検索語句レポートです。CVRが下がった期間とその前の期間を比べ、「増えた検索語句」を費用順に並べます。部分一致やP-MAXの拡張で、購買意図の薄い情報収集系の語句、他社名、無関係な語句への配信が増えていれば、CVR低下の主因は広告側です。LPをどれだけ磨いても、そもそも欲しい人が来ていなければ数字は動きません。
指名・一般の比率:平均CVRのマジック
見落とされがちなのが、指名キーワード(社名・サービス名)と一般キーワードの構成比です。指名のCVRは一般の数倍から数十倍になることが多いため、指名の検索数が減ったり、一般側の予算が増えたりするだけで、アカウント全体の平均CVRは下がります。この場合、個々のキャンペーンのCVRは変わっていないのに「悪化した」ように見えます。必ずキャンペーン別・広告グループ別の内訳で確認します。
ターゲティングと配信面の変化
デマンド系キャンペーンやP-MAXの比率が増えた、地域・時間帯の設定を変えた、オーディエンスを広げた、といった変更履歴も確認します。管理画面の変更履歴で、CVRが動き始めた日付の前後に何をしたかを突き合わせると、犯人が見つかることは珍しくありません。とくにP-MAXは検索以外の面(ディスプレイ、YouTube、Gmailなど)にも配信されるため、面の構成が変わるだけでアカウント全体のCVRは動きます。検索キャンペーン単体のCVRと分けて見るのが基本です。
外部要因:競合とオークション環境
広告側・LP側のどちらでもない第三の要因として、市場環境の変化があります。競合が大型キャンペーンを始めれば、ユーザーは複数社を比較するようになり、自社LPの出来が同じでもCVRは下がります。オークション分析レポートで競合のインプレッションシェア(広告が表示可能だった合計回数のうち、実際に表示された回数が占める割合)の変化を見る、主要キーワードで実際に検索して競合の広告とLPを確認する、というひと手間で、この線の有無はある程度判断できます。季節性の強い商材なら、前年同期比でCVRを見るのも忘れずに。前月比だけで「悪化した」と騒ぐのは早計なことがあります。
3. LP側に原因があるパターン:受け皿の詰まりを見る
2段階に分解する:フォーム到達率と完了率
LP側の分析は、CVRをひとつの数字で見ずに「LP閲覧 → フォーム到達」と「フォーム到達 → 送信完了」の2段階に割るところから始めます。GA4でフォームページ(または埋め込みフォームの表示イベント)への到達をイベントとして取れば、どちらの歩留まりが悪いかが分かります。
フォーム到達率が低いなら、LPの内容・構成の問題です。ファーストビューで何のページか伝わっていない、広告の訴求とLPの見出しがズレている、CTAボタンが遠い・目立たない、といった論点になります。フォーム完了率が低いなら、フォーム自体の問題で、項目数・エラー表示・スマホでの入力しやすさを疑います(改善の優先順位は入力フォーム改善(EFO)でCPAを下げるで詳しく扱っています)。
表示速度と表示崩れ:改善以前の足切り要因
PageSpeed Insightsなどで、スマホでの読み込み速度を確認します。表示に数秒かかるLPは、内容を読まれる前に離脱されます。あわせて、実機のスマホでLPを開き、ファーストビューの崩れ、画像の遅延、フォームの表示不具合がないかを見ます。デバイス別のCVRでスマホだけ極端に低い場合、この系統の不具合が潜んでいることが多い印象です。
信頼要素と価格情報:読まれた上で選ばれない場合
到達も速度も問題ないのにCVしない場合は、「読まれた上で選ばれていない」可能性を考えます。よくある論点は、料金が書かれていない(または見つけにくい)、導入実績やお客様の声などの裏付けが弱い、問い合わせ後に何が起こるかが書かれていない(しつこい営業への警戒)、の3つです。このレベルの課題は数字だけでは特定しにくいので、ヒートマップツールでの読了・クリック位置の確認や、既存顧客への「契約前に不安だったこと」ヒアリングが手掛かりになります。
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4. 切り分けの実務手順:4つの分解軸で当たりを付ける
「広告かLPか」を一発で判定する魔法の指標はありませんが、次の4軸で分解すると、当たりはかなり絞れます。
- (1)流入元別:Google広告経由と、自然検索・他媒体経由で同じLPのCVRを比べる。広告経由だけ低ければ流入の質(広告側)、全流入で低ければLP側の可能性が高い
- (2)デバイス別:PCとスマホでCVRの開きを見る。スマホだけ極端に低ければLPの表示・フォームのスマホ対応を疑う
- (3)キャンペーン・語句グループ別:指名と一般、意図の強い語句と弱い語句でCVRを分ける。一般側だけ悪化していれば語句の質(広告側)の線が濃い
- (4)時系列:CVRが落ちた「日付」を特定し、広告の変更履歴・LPの更新履歴・計測タグの変更と突き合わせる
とくに(1)の流入元比較は強力です。自然検索経由では今まで通りCVしているのに広告経由だけ落ちているなら、LPを作り直す前に検索語句とターゲティングを見るべきですし、逆ならLP・フォームの変更点を疑うべきです。
実際の進め方のイメージを挙げます。あるBtoBサービスで「先月からCVRが1.8%から1.1%に落ちた」という相談があったとします。まず流入元別に見ると、自然検索経由のCVRは横ばいで、広告経由だけが低下。次にキャンペーン別に見ると、指名キャンペーンは変わらず、一般キーワードのキャンペーンだけが悪化。検索語句レポートを開くと、部分一致の拡張で「無料テンプレート」系の語句への配信が前月比3倍になっていた。ここまで15分ほどの作業で、「LPではなく語句の質」と当たりが付き、打ち手は除外キーワードの追加とマッチタイプの調整に絞られます。分解の順番さえ決まっていれば、切り分けは特別な技術ではなく手順の問題です。
5. 判定の目安と直す順番:安いほうから外す
切り分けの結果、両方に課題が見つかることも多いです。その場合の順番は「工数が小さく、影響範囲が読みやすいもの」からです。よくある優先順位は次のとおりです。
- 計測の不具合修正(数字が正しくなければ以降の判断がすべてぶれるため)
- 無関係な検索語句の除外・マッチタイプの見直し
- LPの表示速度・表示崩れの修正
- フォーム改善(項目数、エラー表示、スマホでの入力性)
- ファーストビューの訴求変更
- LP全体の再設計(最も高コストなので最後)
前半の打ち手は数日で実行でき、効果の因果も追いやすいのに対し、LPの再設計は制作コストがかかるうえ、変えた要素が多すぎて何が効いたか分からなくなりがちです。「LPを作り直したい」という話が出たときこそ、この記事の切り分けを先にやる価値があります。広告文とLPの訴求のつながりに課題が見つかった場合は、広告とLPのメッセージ一致も参考にしてください。
もうひとつ、切り分けの結果は記録に残すことを勧めます。「この日に検索語句のズレを特定し、除外を入れた。2週間後にCVRがこう動いた」という記録が貯まると、次に同じ症状が出たときの初動が速くなりますし、代理店に運用を任せている場合も、レポートの説明が妥当かを判断する物差しになります。切り分けの手順そのものが、アカウントの資産になっていくわけです。
なお、CVRだけを追いすぎると、フォームのハードルを下げて質の低いリードが増える、という副作用も起こります。リードビジネスでは、CVRとあわせて商談化率などの後工程の数字も見る前提で改善を回すのが安全です。
6. 症状別の早見表:この見え方なら、まずここを開く
切り分けに慣れるまでは、症状から入り口を決めてしまうのが手っ取り早い方法です。相談を受けたときに実際に使っている対応表を載せておきます。
- クリック数は増えたのにCV数が横ばい:まず検索語句レポートの「増えた語句」を費用順に。部分一致やP-MAXの拡張が主因のことが多い
- スマホだけCVRが半分以下:実機でLPを開き、ファーストビューの崩れとフォームの入力性を確認。PageSpeed Insightsでモバイルの表示速度も見る
- ある日を境に急落した:変更履歴とLPの更新履歴、タグの更新日を突き合わせる。1日で急落する原因は設定か計測のどちらかであることがほとんど
- じわじわ数か月かけて下がった:指名比率の変化、競合の増加、LPの陳腐化が候補。前年同期比もあわせて見る
- CV数は出ているのに商談化しない:フォームの項目を削りすぎていないか、マイクロコンバージョン(資料DLや電話タップなど、売上手前の小さな行動をCVとして計測したもの)を主要コンバージョンとして学習させていないかを疑う
- 自然検索経由も同時に落ちている:広告ではなくLPかフォーム、あるいは計測側。広告の調整に時間を使わない
数字の見方でひとつ注意しておきたいのが、母数の小ささです。週に10クリックしかない広告グループのCVRが0%でも、それは「悪い」ではなく「まだ分からない」です。判断の目安として、クリック数が100に満たない単位でのCVR比較は参考値にとどめ、期間を延ばすか階層を上げてから結論を出すほうが安全です。少ないデータで原因を決めつけ、除外や停止を進めてしまうと、あとから戻すのが難しくなります。
もうひとつ、社内での説明の順番も実務では効いてきます。「CVRが落ちました。原因を調べています」ではなく、「流入元別で見ると広告経由だけ低下、キャンペーン別では一般キーワードのみ、検索語句では特定系統の増加を確認。除外を入れて2週間で再判定します」と言えると、打ち手を止められずに済みます。切り分けの手順を持っていることは、分析の精度だけでなく、社内の合意形成の速度にも効きます。
よくある質問
Q. CVRの目安はどのくらいですか?低いかどうかの基準が分かりません。
A. 業種・商材・キーワードの種類で大きく変わるため、一律の基準はあまり当てになりません。指名検索なら数十%、一般検索なら1〜3%前後に収まるケースが多いと言われますが、他社比較より「自社の過去実績との比較」と「指名・一般を分けた内訳での比較」のほうが判断材料として有効です。
Q. 広告側とLP側、どちらの改善が先に効きますか?
A. 多くの場合、先に効くのは広告側(検索語句の除外や配分見直し)です。数日で実行でき、無駄な費用が直接減るためです。ただし流入元別の比較で全流入のCVRが低いと分かった場合は、広告をいくら調整しても頭打ちになるので、LP側(とくに表示速度とフォーム)を先に直すほうが効果的です。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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