代理店に初めて依頼する前に自社で決めておく5つ(目標CPA・予算・CVの定義・権限・期間)
広告代理店に初めて依頼する前に自社で決めておくのは、目標CPA・月予算・成果の定義・権限の渡し方・評価期間の5つです。目標CPAは、コンバージョン(CV、問い合わせや購入などの成果地点のこと)1件に払う広告費の目標で、成約1件の粗利×成約率で出した上限の6〜7割が出発点になります。
「目標CPAは1件いくらですか」と初回の打ち合わせで聞かれ、答えられないまま代理店に決めてもらう。初めての依頼で最も多い失敗はこれです。5つとも代理店が決めてくれそうに見えますが、どれも自社の商売の数字と権利に関わる事項で、代理店は材料を持っていません。
決めるのに必要なのは、成約1件の粗利と、問い合わせから成約に至る割合の2つの数字です。この2つがあれば目標CPAは電卓で出ますし、目標CPAと予算が決まれば、月に何件の成果を期待できるかも、評価にどれだけの期間が要るかも、自動的に決まります。5つは独立した項目ではなく、最初の数字から順に導かれる1本の計算です。
この記事の要点
- 目標CPAは、成約1件の粗利×成約率で出した上限の6〜7割が出発点
- 予算は「目標CPA×月に欲しい件数」で決め、代理店の手数料を別枠で足すこと
- コンバージョンの定義は1つに絞り、電話や資料請求を同じ重さにしない
- アカウントは自社名義で作り、代理店には運用権限だけ渡す。評価期間は3か月で区切る
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サンプルを見る(無料・その場でダウンロード)1. 目標CPA:粗利と成約率から逆算する
CPA(CV1件あたりにかかった広告費)の目標は、業界の相場から持ってくるものではなく、自社の粗利から逆算するものです。計算は3段階で済みます。
例を置きます。成約1件の粗利が10万円、問い合わせ5件のうち1件が成約する会社なら、成約率は20%。問い合わせ1件が将来生む粗利の期待値は、10万円×20%で2万円となり、これが1件に払える上限CPAですが、全額を使えば利益はゼロになるので、代理店にはその6割の1万2,000円を目標CPAとして渡します。残りの4割が、代理店の手数料と営業の人件費と利益の取り分です。6〜7割のどこに置くかを含めた計算の手順は「目標CPAを初めて決める」の記事で扱っています。
逆算した目標CPAが業種の相場と比べて極端に低いなら、その業種で広告を出しても採算が合わない可能性が高く、代理店に頼む前に粗利か成約率のどちらかを上げる必要があると分かります。逆に相場の2倍あるなら、余裕を持って任せられます。相場の見方は「リード獲得単価の相場観」が参考になります。
2. 予算:目標CPA×欲しい件数、手数料は別枠
予算は掛け算で出します。目標CPAに月に欲しい件数を掛けるだけで、月30件の問い合わせが欲しくて目標CPAが1万2,000円なら、広告費は36万円。ここに代理店の手数料が乗ります。手数料は広告費の20%前後が多いので、36万円の広告費なら手数料は7万2,000円、月の支出は43万2,000円です。
この例で採算を確かめます。30件の問い合わせから成約6件で粗利は60万円、支出43万2,000円を引くと16万8,000円が残り、粗利の3割近くが手元に残る計算なので、営業の人件費を差し引いても赤字にはなりにくい水準です。逆に、手数料を「広告費に含まれている」と思い込んで36万円の予算を伝えると、実際の広告費は30万円に目減りし、同じCPAなら月25件、成約5件に落ちます。
代理店に伝える予算は、「広告費」と「手数料込みの総額」のどちらなのかを明示しておけば、この一言だけで見積りの読み違いはほぼ防げます。Meta広告なら、2027年2月からの開示ルールで、API経由で運用する代理店に広告費と手数料を分けて出してもらえるようになります。
3. コンバージョンの定義:1つに絞る
3つ目は、何をCVとするかです。候補は複数あり、ここを決めずに依頼すると、代理店は計測しやすいものを、問い合わせ完了、電話番号のタップ、資料請求、LP(広告のリンク先ページ)の滞在と並べてきます。全部をCVにすれば月次レポートの件数は増えますが、目標CPA 1万2,000円の前提は「成約率20%の問い合わせ」で計算したものなので、電話タップが混ざった瞬間に前提が崩れます。
数えるのは1つ。先ほどの逆算に使った成果だけをメインのCVにするので、この例なら「問い合わせフォームの送信完了」が唯一のメインで、電話や資料請求はサブとして数えるだけにする。自動入札がメインのCVを教師に動くため、この区分は件数の見栄えではなく、広告費の向き先を決める設定になります。
加えて、CVの件数を自社の受付記録と毎月突き合わせることも、依頼前に決めておきます。レポートの件数と社内の件数は合わないのが普通で、その差を「誰が、毎月何日に」確認するかを決めていないと、半年後に「件数は出ているが商談がない」という形で気づきます。突き合わせの手順は「CV数と問い合わせ件数が合わない」の記事のとおりです。
4. 権限:自社名義で作り、運用権限だけを渡す
4つ目は権限です。ここは依頼前に決めておかないと取り返しがつきにくい項目です。原則は1つです。広告アカウントは自社の名義で作り、代理店にはそのアカウントの運用権限を付与する。
Google広告なら、自社のGoogleアカウントで広告アカウントを作り、代理店からのMCC(複数アカウントを束ねる管理用アカウント)のリンク申請を承認する形が一般的です。自社側は「管理者」の権限を持ち続け、代理店には運用に必要な「標準」の権限で足ります。Meta広告なら、自社のビジネスポートフォリオ内で広告アカウントを作り、代理店のポートフォリオにパートナーとして運用権限を割り当てます。
代理店側で作ってもらうほうが早い、と言われることがあります。早いのは事実です。ただ、代理店の名義で作られたアカウントは、契約が終わるときに配信履歴ごと代理店の手元に残り、Meta広告に至っては別のポートフォリオへ移す手段がありません。自社名義で作るのにかかる時間は両媒体とも合計で1時間ほどなので、1時間の手間と、数年分の蓄積のどちらを取るかという比較になります。差は歴然です。
権限の設計を自社で決めると、もう1つ効果があります。読み取り専用の権限を自社の誰かが持っていれば、代理店の作業を止めずに、管理画面の中身をいつでも自分の目で見られることです。今の運用体制を替える必要も、代理店に気を遣う必要もなく、閲覧だけで確認は完結します。
5. 期間:3か月で区切り、判断材料を決めておく
最後は、成果を評価する期間です。初回の出稿から3か月を1つの区切りにし、その時点で何を見て続けるかどうかを決めるのかを、依頼前に代理店と合意しておきます。
根拠は件数です。自動入札はCVの件数が集まるまで配信が安定しません。Meta広告なら広告セットあたり週50件が学習完了の目安とされていますが、月36万円でCPA 1万2,000円なら月30件、週に7件前後で、この目安には3か月たっても届きません。それでも3か月で90件あれば、広告文とLPのどちらを直すかを比べる材料はそろいます。1か月目の数字で判断すると、学習の途中を見て結論を出すことになります。
区切りの時点で見るのは、目標CPAに対する実績、CVの件数、そして自社で突き合わせた商談化率の3つです。CPAが目標の1.5倍以内なら続行、3倍を超えていれば訴求か商材との相性から見直す、という基準を先に決めておけば、3か月後の打ち合わせが「なんとなく続ける」にはなりません。最低契約期間や解約条件は、この評価期間と整合させて決めるもので、契約面の確認事項は「代理店の契約書チェック」の記事で一通り確認できます。
5つを一覧にします。右の列は、決めずに頼んだときに起きがちなことです。
| 決めること | 決め方 | 決めずに頼むと |
|---|---|---|
| ①目標CPA | 成約粗利×成約率(上限)の6〜7割 | 代理店が相場で置き、採算と無関係な目標になる |
| ②予算 | 目標CPA×欲しい件数。手数料は別枠 | 手数料込みと誤解し、広告費が2割近く目減り |
| ③CVの定義 | 逆算に使った成果だけをメインに | 電話タップが混ざり、件数は増えて商談は増えない |
| ④権限 | 自社名義で作成、代理店に運用権限 | 解約時に履歴ごと失う |
| ⑤期間 | 3か月で区切り、判断基準を先に合意 | 1か月で焦るか、惰性で1年続ける |
5つを決めて依頼すれば、代理店との打ち合わせは「お任せします」から「この前提で頼みます」に変わります。発注側の準備としては、ここまでで十分です。
ただし、3か月後に届いたレポートの数字が、決めた前提に照らして妥当なのかを読む作業は、別の難しさがあります。CPAが目標の1.3倍だったとき、それが立ち上がり期の正常な範囲なのか、設定に問題があって本来の実力が出ていないのかは、レポートの表からは分かりません。同じ業種で複数のアカウントを見た経験がないと、1.3倍という数字に「普通」の基準を当てられず、運用している代理店に聞けば、自分の運用を自分で採点する答えが返ってきますし、発注側の担当者は比べる相手を持っていません。
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6. 代理店に5つを渡した後に残る問い
5つの項目は、どれも代理店に代わりに決めてもらえそうに見えて、実際には自社にしか材料がありません。粗利と成約率を知っているのは自社だけで、何を成果と呼ぶかも、アカウントを誰の名義にするかも、発注側が決めて初めて代理店が動けます。初回の依頼でこの5つを渡せる会社は、それだけで代理店側の提案の精度が1段上がります。渡して終わりではありません。
5つを渡した後も、依頼側の仕事は月に10分だけ残ります。月に1回、読み取り専用の権限で管理画面を開き、メインのCVが決めたとおり1つのままか、アクセス権に見覚えのない名前が増えていないか、日予算の合計が伝えた予算と合っているかを見ます。この3点は10分で確認でき、代理店の作業を止めることもありません。
そして、決めた5つが3か月後にどう運用されたかを採点する段になると、材料は逆に自社の外にあります。目標CPAに対する実績が妥当か、CVの定義どおりに設定されているか、権限の設計が守られているか、といった点は管理画面を閲覧できれば確認できる事項ですが、確認した結果に点を付けるには、他のアカウントとの比較が要ります。5つを決めたのが自社である以上、その5つが守られているかを点検する役まで、運用している代理店に預ける理由はありません。点検の目は当事者の外に置く。3か月後の打ち合わせで代理店の説明をそのまま受け取らずに聞けるかどうかは、その目があるかで決まります。
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よくある質問
Q. 粗利や成約率がまだ分かりません。それでも目標CPAを決める必要がありますか?
A. 決めてください。仮の数字で構いません。過去の受注から成約1件の粗利をざっくり出し、成約率は問い合わせ10件のうち何件が決まったかを思い出せる範囲で置きます。仮置きの目標CPAでも、代理店に「この数字の根拠はこうです」と伝えられる状態と、「分かりません」では、提案の中身が変わります。3か月の実績で成約率が見えてきたら、その時点で目標CPAを置き直せば済みます。
Q. 代理店に「目標CPAは運用しながら決めましょう」と言われたら、従ってよいですか?
A. 目標の「上限」を自社で持っておくなら、従って構いません。立ち上がり期に目標を固定しない、という意味なら理解できる提案です。ただ、粗利から逆算した上限を超えたら採算が合わないという線は、運用の経過で動く数字ではないので、上限だけは依頼前に自社で決めておきます。上限を伝えたうえで、3か月は目標CPAの1.5倍まで(上限の内側)を許容範囲にする、といった形なら、代理店の提案と自社の採算の両方が立ちます。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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