広告レポートのCV数と問い合わせ件数が合わない:原因5つと突き合わせの手順
月末に届いた広告レポートには「コンバージョン31件」とあり、コンバージョン(CV、問い合わせや購入などの成果地点のこと)が31件なら悪くない数字です。ところが社内の問い合わせ管理表を開くと、広告経由らしき問い合わせは22件しかない。9件、どこへ消えたのか。逆のパターンもあります。レポートは12件なのに営業側は「広告を見た」という電話を今月だけで20本近く受けていて、どちらの数字を信じて広告費の判断をすればいいのか分からない、という相談は本当に多いです。
この「レポートと現実が合わない」問題は、放置してよい誤差の場合と、計測の事故が起きている場合があり、見分けるには突き合わせるしかありません。似たテーマに「GA4とGoogle広告の数字が合わない」がありますが、あちらは計測ツール同士の仕様差の話で、対処は「GA4とGoogle広告の数字のずれ」に書きました。本記事が扱うのはツール間ではなく、レポートの数字と社内で起きている現実との差です。原因は5つに分かれ、突き合わせはスプレッドシート1枚で終わります。
この記事の要点
- CV数と問い合わせ件数の完全一致はもともと起きない。問題になるのは差が2割以上ある月が続く場合や、方向が一定の場合
- 原因は5つ:二重計測、電話・メール経由の計測漏れ、計上日とアトリビューションの違い、テスト・スパムの混入、フォーム改修や別ドメインによる欠落
- 切り分けはスプレッドシートで両者を日付順に並べ、1件ずつ照合するだけ。1カ月分で30分〜1時間
- 台帳整備やスパム対策は自力で直せる。タグの発火検証や二重計測の技術的な特定は専門領域で、読み取り専用の権限があれば外部でも確認できる
1. どこからが「問題のあるずれ」なのか
先に線引きをしておきます。レポートのCV数と社内の件数は健全なアカウントでも完全には一致せず、深夜の問い合わせをどちらの日付に数えるかで1〜2件はずれますし、計測を拒否するブラウザ設定のユーザーもいます。数件の差に毎月目くじらを立てる必要はありません。
疑うべきなのは、次のどれかに当てはまるときです。①差が2割以上ある月が続く(レポート30件に対し社内24件以下、のような水準)、②差の方向がいつも同じ(レポートが常に多い、または常に少ない)、③あるタイミングを境に急にずれ始めた。特に③は、サイト改修やフォーム変更と時期が一致していることが多いものです。計測の事故のサインです。
突き合わせの前に、集計の条件もそろえておきます。広告レポートの数字は反映に時間差があり、月が明けてすぐ取った数字は数日後に増えていることがあります。比べるなら月初の5営業日を過ぎてから、期間・対象キャンペーン・CVの種類(電話やマイクロCVを含むかどうか)を固定して取り出すこと。条件のずれた比較は、ずれの原因を自分で1つ増やすのと同じです。
そしてこのずれはレポートの見栄えの問題にとどまらず、CVデータは自動入札の学習材料でもあるため、水増しされたCVに向かって入札が最適化されたり、取りこぼしで学習が痩せたりします。CPA(CV1件あたりにかかった広告費)の実態も分母のCV数が違えば当然変わるので、数字合わせではなく、広告費の使われ方そのものに関わる話です。
2. 原因は5つに分類できる
ずれの原因は、方向(レポートが多いのか少ないのか)でおおむね見当がつきます。5つに分類して見ていきます。
| 原因 | ずれの方向 | 典型的な起き方 |
|---|---|---|
| ①二重計測 | レポートが多い | サンクスページの再読み込みで1件が2件に。タグの重複設置 |
| ②電話・メール経由の計測漏れ | レポートが少ない | 電話や代表アドレス宛のメールはフォームを通らず、計測に乗らない |
| ③計上日とアトリビューションの違い | 月またぎで両方向 | Google広告はクリックした日に遡って計上するため、社内の受信日と月がずれる |
| ④テスト・スパムの混入 | レポートが多い | 制作会社のテスト送信や海外からのスパム送信もCVとして数えられる |
| ⑤フォーム改修・別ドメインによる欠落 | レポートが少ない | 改修でサンクスページのURLが変わりタグが動かない。予約システムなど別ドメインで計測が切れる |
①の二重計測でいちばん多いのは、フォーム送信後のサンクスページをユーザーが再読み込みしたり、ブラウザバックで戻ったりして、タグが2回動くパターンです。Google広告側のカウント設定が「全件」になっているとそのまま2件と数えられますし、GTMとページ直書きでタグが二重に入っているケースも古いサイトでは珍しくありません。
②は業種によっては最大の要因です。高齢のお客様が多い業種や緊急性の高いサービスでは、成約に近い人ほどフォームではなく電話を選び、電話・来店・返信メールはフォームを通らないので、対策をしない限り広告の成果としては1件も残りません。計測の選択肢は「電話コンバージョンの計測方法」に書いたとおりです。
③は事故ではなく仕様です。Google広告の「コンバージョン」列は、CVが発生した日ではなく、そのCVにつながったクリックの日に計上されるので、8月31日にクリックして9月2日に問い合わせた1件は、8月のレポートに足されます。社内の管理表は受信日で数えるはずなので、月末月初をまたぐ案件が多いほど月次の数字はずれます。アトリビューション(どのクリックにCVの成果を割り当てるかのルール)の集計にも反映までの時間差があり、月初に見た先月分の数字が数日後に増えていることもあります。月次の数字を確定値として扱うなら、締めの取得日を決めて社内と代理店で共有しておくと、この種のずれは騒ぎにならずに済みます。
④と⑤は症状が静かに進むのが厄介で、スパム送信は営業時間外の英文問い合わせなどで社内的には「ノーカウント」でも、タグは律儀に発火します。⑤のフォーム改修は逆で、サンクスページのURLが変わった瞬間からCVがゼロに近づくのに、レポート上は「数字が減った」としか見えず、原因がフォーム側だと気づくのが遅れます。
3. スプレッドシートでの突き合わせ手順
原因の見当をつけるには、1カ月分を1件ずつ照合するのが結局いちばん速く、手順は4つで、慣れれば30分〜1時間で終わります。
①広告レポートまたは管理画面から、その月のCVを日付ごとの件数で書き出す。②社内の問い合わせを、フォーム通知メール・電話メモ・代表アドレス宛メールから拾い、同じく日付順に並べる。③2つの列を日付で照らし、対応が取れる件に印を付ける。④対応が取れない件に、残った候補(二重・電話・テスト・スパム・月またぎ)のどれに見えるかをメモする。
照合のキーは日付と時刻です。フォームの通知メールには受信時刻が残るので、同じ日に3件、4件とある日でも、時刻を見れば1対1の対応が取れます。付ける印は3種類で足ります。対応が取れた件に○、レポート側にしかない件に原因の見立て(重複なら「重」、テストなら「テ」など)、社内側にしかない件に経路(電話・メールなど)。この印を集計した結果が、そのまま原因の内訳表になります。
実例に近い形で示します。レポート31件、社内22件、差は9件だったケースでは、照合の結果、同一人物・同時刻帯の重複が5件(サンクスページの再読み込みによる二重計測)、制作会社のテスト送信が2件、英文のスパム送信が2件でした。5件と2件と2件で9件。差の全部に説明が付き、「実力のCVは22件」と分かった時点で、このアカウントの本当のCPAはレポートの見た目より4割ほど高いことも判明しました。逆に、社内の22件の側に電話の問い合わせが含まれているなら、それはレポートに乗らない成果として別途評価する必要があります。
この作業の価値は、ずれに名前が付くことです。名前が付けば対処はそれぞれ決まった型があり、全部を一度に直す必要はなく、件数への影響が大きいものから1つずつで足ります。先の例なら、まず二重計測の5件を止めるための設定確認を依頼し、テストとスパムの計4件には判別ルール(送信元アドレスや文面での除外)を決める。この2つの手当てで、差の9件はすべて解消に向かいます。
4. どこまで自力で直せて、どこからが専門領域か
境目は明確です。自力で直せるのは、運用の周辺にあるものです。社内の問い合わせ台帳を1本化して受信日と経路を残す。フォームにreCAPTCHAなどのスパム対策を入れる。制作会社にテスト送信時の申告ルールを決める。計上日の仕様を理解して、月次比較は同じ基準でそろえる。このあたりは広告の専門知識がなくても進みます。
一方、タグが実際にどう発火しているかの検証、二重計測の技術的な原因の特定、別ドメインをまたぐ計測の設計、電話計測の導入判断は、管理画面とタグの中身に踏み込む領域です。GTMの構造まで絡むと、切り分けには「GTMの棚卸し」で書いたような手順が要り、ここを勘で触ると、直ったかどうかの確認すら難しくなります。
やっかいなのは、この検証を運用している代理店本人に頼むと、自分の設定を自分で採点する構図になることで、誠実にやってくれる場合がほとんどですが、検証としての信頼性は設定した本人以外の目で見るほうが上がります。そして計測の確認だけなら閲覧のみの権限で外部からでも完結し、触るのは目だけなので配信は動きませんし、今の座組みもそのままで構いません。
※ 突き合わせで差の説明が付かなかった方へ ― その差が二重計測なのか欠落なのかは、アカウントと計測設定の中を見れば切り分けられます。月次診断「アドサプリ」の実際の診断レポートのサンプル(無料)を用意していますので、計測まわりがどう確認されるかをご覧ください。
5. ずれの放置は「数字への信頼」ごと崩す
最後に、放置した場合に何が起きるかです。1つ目は判断のゆがみです。二重計測が乗ったCV数で「好調」と判断して予算を増やせば、水増しされた成果に実費を投じることになり、先ほどの例なら、31件だと思っていた成果の実力は22件で、CPAは見た目の1.4倍。増額の判断はできません。
2つ目は学習への影響です。自動入札はCVデータを教師にして誰に配信するかを決めるため、スパムや重複が混ざれば「スパムを送りそうな人」に寄った配信すら起こり得ます。取りこぼしの方向なら、本当は成果になっているクリックが評価されず、学習が細ります。
そして3つ目が、いちばんじわじわ効きます。数字が現実と合わない状態が続くと、社内で誰もレポートを信じなくなり、広告の議論が全部「なんとなく」に戻ってしまうのです。突き合わせて差に名前を付けるところまでは、スプレッドシート1枚あれば自社で終わり、終わらないのは、その名前が本当に正しいかの検証です。二重計測に見えた5件が本当に二重なのか、タグがどの瞬間に何回動いているかまで遡って確かめる作業は、その設定を組んだ人以外の目でないと検証になりません。台帳は自社で持つ。タグの中身は外側に見てもらう。この2本立てにしたときだけ、レポートの数字は判断に使える数字に戻ります。
※ 毎月の突き合わせまで手が回らない方へ ― 計測の健全性を含めた月次の定点チェックを外部に持つやり方もあります。実際の診断レポートのサンプル(無料)で確認できる項目をご覧いただけます。
よくある質問
Q. 差が1割程度で安定している場合も、原因を特定すべきですか?
A. 方向が一定なら、一度だけ突き合わせて正体を確かめておくと安心です。毎月レポートが1割多いのが「月またぎの計上日ずれ」だと分かっていれば、以後は誤差として扱えます。正体不明のまま「だいたい合っているから」と流すのと、説明の付く1割は、同じ1割でも数字の信頼度がまったく違います。特定した後まで毎月厳密に照合し続ける必要はありません。
Q. 代理店に「数字が合わない」と伝えると、角が立ちませんか?
A. 詰問ではなく共同作業として持ちかければ、まず問題になりません。「計測がずれていないか、突き合わせに付き合ってほしい」という依頼は、代理店側にとっても学習データの品質に関わる話なので、本来は歓迎すべき内容です。もし嫌がられたり曖昧な回答が続いたりするなら、その反応自体が運用体制を見直す材料になります。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
実際のカルテ(サンプル)をその場でダウンロード
ご入力後、その場でサンプル(PDF・一部抜粋)をダウンロードできます。まず中身を見たい方向けです。
