検索語句レポートの「その他」問題:見えない検索語句にどう対処するか
検索語句レポートを開いて費用の合計と見比べたとき、「表示されている語句の費用を全部足しても、キャンペーンの費用に全然届かない」と気づいたことはないでしょうか。差分はどこへ消えたのか。答えは、レポートに表示されない検索語句、いわゆる「その他」に集約された部分です。部分一致やP-MAXの比重が高いアカウントでは、費用の半分以上がこの見えない領域で使われていることも珍しくありません。
見えない語句をゼロにする方法は、残念ながらありません。これはGoogleがプライバシー保護を理由に仕様として非表示にしているためで、設定でどうにかなるものではないからです。ただし、見える範囲を最大化する集計の工夫と、見えない部分を前提にした守りの設計はできます。この記事では、「その他」の仕組みを正しく理解したうえで、実務でできる対処を順に整理します。
この記事の要点
- 2020年9月以降、一定数のユーザーが検索した語句だけがレポートに表示される仕様になった
- 検索数の少ないロングテール語句は「その他」に集約され、個別には確認できない
- 集計期間を延ばす、アカウント単位で見る、頻出単語で分解するなど、見える範囲を広げる工夫はある
- 見えない部分には、カテゴリ単位の先回り除外と定期的な棚卸しで備える
1. 「その他」の正体:プライバシーしきい値という仕様
検索語句レポートは、左メニューの「キャンペーン」から「分析情報とレポート」内の「検索語句」で確認できます。ここに表示されるのは、広告の表示やクリックにつながった検索語句のうち、「十分な数のユーザーが検索した」と判定されたものだけです。検索したユーザーが少ない語句は、個人の特定につながり得るデータとしてプライバシー基準の対象になり、個別表示されずに集計行へまとめられます。これがいわゆるプライバシーしきい値です。
この仕様が入ったのは2020年9月で、それ以前は「クリックが1回でもあれば語句が見える」状態でした。2021年9月には、表示対象を過去の期間や表示のみの語句にも広げる緩和が行われましたが、「少数派の語句は見えない」という原則は現在も変わっていません。しきい値の具体的な数字は公開されておらず、運用者側でコントロールする手段もありません。まず「これは異常ではなく仕様」と理解することが出発点になります。
2. どのくらい見えないのか:アカウントによっては半分以上
見えない割合はアカウントの構成によって大きく変わります。目安として、完全一致中心で検索ボリュームの大きいキーワードを扱うアカウントでは見えない部分は小さく、部分一致の比率が高くロングテールの検索を広く拾うアカウントほど「その他」が膨らみます。業界では、クエリの8割近くが管理画面から見えなくなったケースがあるという指摘もあり、程度の差はあれ「見えない費用」はどのアカウントにも存在すると考えたほうが実態に合います。
自分のアカウントでの割合は簡単に確かめられます。検索語句レポートの表示行の費用・クリックを合計し、同じ期間のキャンペーン全体の数値と比べるだけです。差分が「その他」で使われた分にあたります。まずこの割合を把握しておくと、「除外キーワードをどれだけ丁寧に入れても届かない領域がどれだけあるか」が数字で見え、後述の守りの設計にどこまで力を入れるべきかの判断材料になります。
手順まで具体的に書くと、次の3ステップです。
- 「キャンペーン」から「分析情報とレポート」内の「検索語句」を開き、期間を過去30日に設定してレポートをダウンロードする
- スプレッドシートで、費用列とクリック列をそれぞれ合計する
- 同じ期間・同じキャンペーンの合計費用を管理画面の概要から拾い、差を出す
「検索語句レポートの合計費用 ÷ キャンペーン合計費用」が可視率です。この数字を四半期に一度メモしておくと、部分一致の比率を上げた、P-MAXを増やした、といった構成変更が可視率にどう響いたかを追えるようになります。可視率が5割を切っているのに除外キーワードの追加だけで改善しようとしている場合、労力の置き場所を見直したほうが早い、という判断もできます。
3. 見える範囲を最大化する集計の工夫
仕様は変えられませんが、同じデータでも見せ方で回収できる情報量は変わります。実務で効く工夫は次の3つです。
集計期間を延ばす
しきい値は一定期間内の検索ユーザー数で判定されるため、7日間では埋もれていた語句が、90日間の集計では表示対象に入ってくることがあります。除外キーワードの棚卸しをするときは、直近7日ではなく30日〜90日の長い期間で見るのが基本です。
広い階層で見る
検索語句レポートはキャンペーンや広告グループで絞るほど分母が減り、しきい値に届かない語句が増えます。傾向をつかむ目的なら、アカウント全体や複数キャンペーンをまとめた状態で確認するほうが多くの語句を拾えます。
単語単位で分解する
表示されている語句をスプレッドシートに書き出し、単語(例:「無料」「求人」「使い方」)ごとに費用とコンバージョンを集計する方法です。Nグラム分析と呼ばれる手法で、検索語句を1語や2語のまとまりに分解し、そのまとまり単位で成果を集計する考え方です。個別語句としては見えなくても、「無料」を含む検索が費用を食ってコンバージョンしていない、といった傾向は表示分から推定できます。見えている2割が、見えない8割の縮図になっていることは多いのです。
Nグラム集計を自分で回す手順
Nグラム分析は専用ツールがなくても回せます。ダウンロードした検索語句レポートをスプレッドシートに貼り、単語で区切った列を作って、単語ごとに費用・クリック・コンバージョンを集計する。日本語は英語と違って空白で区切られないため、「無料」「比較」「求人」「やり方」「中古」「自作」「とは」など、あらかじめ気になる単語のリストを用意し、検索語句にその単語が含まれるかどうかで判定する形が現実的です。関数でいえば、単語を含む行だけを合計する集計を単語の数だけ並べるイメージになります。
集計できたら、単語ごとに「費用は使っているのにコンバージョンがゼロ」の行を探します。判断の目安は、その単語を含む検索の費用が目標アクション単価の2倍を超えていて、なおコンバージョンが1件も付いていない場合。この条件に当てはまる単語は、除外キーワードの候補として筋がよいものが多い傾向です。ここで見つけた単語を部分一致の除外で登録すれば、見えていない語句のうち同じ単語を含むものにも網が掛かります。個別語句が見えないなら、単語という一段粗い粒度で守る。これが「その他」時代の除外の基本形です。
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4. 見えない部分への守り:先回りの除外設計
個別に見えない語句は、個別には除外できません。そこで発想を変えて、「見えたら消す」から「出そうなカテゴリを先回りで消す」へ移します。具体的には、自社の商材に対して典型的にミスマッチな系統をカテゴリとして洗い出し、除外キーワードリストにしておく方法です。よくある系統は「無料・激安系」「求人・転職系」「やり方・自作系(DIY需要)」「他社ブランド名」「自社と紛らわしい別業種の語」などです。
これらをアカウント共通の除外キーワードリストとして作成し、全キャンペーンに適用しておけば、レポートに現れない検索にも網が効きます。除外のマッチタイプの使い分けや具体的なリストの作り方は、別記事「除外キーワードで無駄クリックを止める」で詳しく解説しています。あわせて、月1回の検索語句棚卸しを定例化し、新たに見えてきた語句からカテゴリを追加していく運用にすると、守りが徐々に厚くなります。
5. 補助データで裏を取る:分析情報とSearch Console
検索語句レポート以外にも、ユーザーの検索を推し量る材料はあります。「分析情報とレポート」内の「分析情報」ページにある「検索語句に関する分析情報」では、個別語句ではなく「検索カテゴリ」「検索サブカテゴリ」という単位で需要の傾向やその増減が示されます。粒度は粗いものの、個別表示に届かない検索の方向性を知る手がかりになります。P-MAXを併用している場合も、この検索カテゴリ単位の分析情報が実態把握の入り口です。
もうひとつ有効なのがGoogle Search Consoleです。こちらはオーガニック検索のデータですが、自社サイトがどんな検索語句で表示・クリックされているかを広告より細かい粒度で確認でき、広告で拾えていない検索需要や、逆に広告に追加すべきキーワードの発見につながります。有料と自然検索でデータの性質は違うため直接の突き合わせはできませんが、「ユーザーが実際に打ち込む言葉」を知る補助線としては十分に役立ちます。
6. 見えない前提で運用を設計する
最後に、考え方の整理です。検索語句が全件見えていた時代の運用は「出たものを見て、悪いものを消す」という事後対応で成立していました。現在は、事後対応でカバーできる範囲が構造的に狭くなっています。だからこそ、除外の先回り設計、コンバージョン計測の精度、そして入札の自動化に正しい成果データを渡すことの重みが増しています。見えない領域の配信品質は、最終的にはスマート自動入札が「何をコンバージョンとして学習しているか」に依存するためです。
言い換えると、「その他」問題への最大の対策は、レポート画面の外にあります。計測が正しく、除外の網が張られ、学習が健全なら、見えない8割はおおむね妥当な方向に最適化されていきます。逆にそのどれかが崩れていると、見えないところで静かに費用が漏れ続けます。月次でこの3点を点検する習慣が、見えない時代の実務的な答えだと考えています。
7. 月次30分の棚卸し手順
ここまでの内容を、毎月まわせる形に落とし込みます。慣れれば30分ほどで一巡します。
- 「キャンペーン」から「分析情報とレポート」内の「検索語句」を開き、期間を過去30日または過去90日に設定する
- キャンペーンで絞らず、アカウント全体の状態で表示する。分母を大きくするほど表示対象に入る語句が増える
- 費用の降順で並べ、上位100語句を目視する。意図のズレた語句はその場で除外に追加する
- レポートをダウンロードし、前段のNグラム集計を更新する。新しく費用を食い始めた単語を探す
- 見つかった単語を、キャンペーン個別ではなく除外キーワードリストに追記する
- 可視率(レポート合計費用 ÷ キャンペーン合計費用)を記録し、前月と比べる
除外キーワードリストは、2026年8月時点では左メニュー下部の「ツール」から「除外リスト」を開き、「除外キーワード リスト」タブで作成して、キャンペーンに適用します。アカウント単位で適用できるリストの仕組みもあるため、全キャンペーンに共通で効かせたい系統はそちらにまとめると管理が軽くなります。キャンペーンごとに個別追加していく運用は、キャンペーンが増えるほど抜けが出やすくなります。「共通の網はリスト、キャンペーン固有の除外だけ個別」という切り分けを最初に決めておくと、半年後の自分が困りません。
ひとつ現実的な注意を添えておくと、除外を入れすぎると配信量が細り、自動入札に渡るデータも減ります。月の除外追加は、費用の裏付けがある語句・単語に絞るくらいでちょうどよいバランスになることが多い印象です。「怪しいから消す」ではなく「いくら使って何件だったから消す」。この一言を添えられるかどうかが、除外作業の質を分けます。
よくある質問
Q. 「その他」に含まれる検索語句を個別に確認する方法はありますか?
A. 管理画面の設定や外部ツールを含め、しきい値未満の語句を個別に確認する正規の方法はないとされています。対処としては、集計期間を30〜90日に延ばす、アカウント全体など広い階層で見る、表示されている語句を単語単位で集計して傾向を推定する、といった工夫で見える範囲を最大化するのが現実的です。そのうえで、見えない部分にはカテゴリ単位の先回り除外で備えます。
Q. 見えない検索語句に広告費が使われるのを防ぐことはできますか?
A. 完全に防ぐことは難しいものの、漏れを小さくすることはできます。ミスマッチになりやすい系統(無料系・求人系・他社名など)を除外キーワードリストとして全キャンペーンに適用する、コンバージョン計測を正確に保って自動入札に正しい学習をさせる、月次で検索語句を棚卸しして除外カテゴリを増やす、の3つが柱です。部分一致を使う場合ほど、この守りの設計が効いてきます。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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