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コンバージョンごとに異なる金額の重み付けをするイメージ図

コンバージョン値の設計:値ベース入札の始め方とリードビジネスの段階値付け

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コンバージョン値Google広告

コンバージョン値の設計:値ベース入札の始め方とリードビジネスの段階値付け

アドサプリ運営チーム2026.08.17
コンバージョンごとに異なる金額の重み付けをするイメージ図

「コンバージョン数は増えたのに売上が伸びない」「問い合わせは来るが商談にならない」。自動入札を使っているアカウントで、この手のズレはよく起こります。原因のひとつは、入札の教科書となるコンバージョン(CV)がすべて「同じ1件」として扱われていることです。1,000円の注文も10万円の注文も、冷やかしの資料請求も本命の商談依頼も等価なら、機械は安く獲れるほうへ寄っていきます。

これを直す仕組みが「コンバージョン値」です。コンバージョン値とは、1件のコンバージョンが事業にもたらす金額(または金額に見立てた点数)のことで、この値の大小をもとに入札を最適化する方式が値ベース入札です。Google広告ではtROAS(目標広告費用対効果)とコンバージョン値の最大化が該当します。ただし値ベース入札は、値の設計を先にやらないと始まりません。この記事では、ECとリードビジネスそれぞれの値の付け方、Google広告での実装方法、切り替えまでの手順を、実務でつまずきやすい順に整理します。

この記事の要点

  • 値ベース入札の条件は「CVに2種類以上の異なる値があること」。全件同じ値では件数ベースと変わらない
  • ECは売上そのままより「粗利ベース」の値のほうが事業の利益と入札の向きが揃いやすい
  • リードビジネスは絶対額が分からなくてもよい。「問い合わせ1:商談5:成約20」のような比率設計で十分機能すると言われる
  • 切り替え前に3週間またはコンバージョンサイクル1〜2周分(長いほう)の値を貯めるのが公式ヘルプの推奨

1. 値ベース入札とは:件数から価値へ、入札の物差しを替える

Google広告のスマート自動入札は、大きく「件数を追う」系統(コンバージョン数の最大化、目標アクション単価)と「価値を追う」系統(コンバージョン値の最大化、目標広告費用対効果)に分かれます。後者が値ベース入札です。

件数ベースの入札は「CVしやすい人」に寄せて配信します。値ベース入札は「CVの中でも金額が大きくなりそうな人」に寄せます。同じ検索語句でも、過去データ上で高額注文や商談化につながりやすいシグナル(時間帯、デバイス、地域、オーディエンスなど)を持つオークションに強く入札する、という理屈です。

2026年8月時点のGoogle公式ヘルプでは、値ベース入札の前提として「コンバージョン目標に関連する固有の価値を2つ以上測定すること」が挙げられています。つまり、購入金額のように取引ごとに変わる動的な値か、CVの種類ごとに差を付けた静的な値か、いずれかの形で「差」を作ることが出発点です。逆に言えば、差を付けた瞬間から機械は値の大きいほうを優遇し始めるので、値の設計はそのまま「どんな顧客を増やしたいか」の意思表示になります。

2. ECの値設計:売上をそのまま使うか、粗利に換算するか

ECの場合、購入金額を動的に計測する設定(eコマース計測やGoogleタグの値パラメータ)が基本形です。まずはこれが正しく動いているかの確認から始めます。金額が税込か税抜か、送料を含むか、通貨設定が合っているかは、意外と揃っていないアカウントが多い部分です。

その上で一段踏み込むなら、売上ではなく粗利に近い値を渡す設計が検討に値します。売上10万円でも粗利率10%の商品と50%の商品では、事業への貢献が5倍違います。売上ベースのtROASは「売上は立つが利益が薄い商品」に寄ってしまうことがあり、カテゴリごとの粗利率を掛けた値を渡すことで、入札の向きと事業の利益が揃いやすくなります。実装の難易度は上がるため、まずは売上ベースで開始し、カテゴリ間の粗利率差が大きいと分かった段階で粗利換算に移行する、という二段構えが現実的です。

この「売上ベースのままだと利益とズレる」現象は、レポート上ではROASの高さとして現れます。ROAS800%と報告されているのに手元に利益が残らない、という状態の原因と、損益分岐ROASの計算式は「ROASが高いのに儲からない理由」で扱いました。値の設計を粗利に寄せるかどうかを判断する前に、今のROASの分母と分子に何が入っているかを確認しておくと迷いません。

返品・キャンセルが多い業態では、確定値との乖離も見ておきます。返品分の値を調整する運用(コンバージョン調整の仕組み)もありますが、まずは返品率が商品群で大きく偏っていないかを確認し、偏りが小さいなら一律の掛け目で十分、というのが実務感覚です。

3. リードビジネスの値設計:段階値付けの作り方

「うちは問い合わせがゴールで金額なんて分からない」というリードビジネスこそ、値の設計の効果が出やすい領域です。ポイントは、絶対額を正確に当てる必要はなく、CVの種類やリードの段階ごとの「比率」が合っていればよい、という点です。公式ヘルプでも、収益が直接分からない場合はリードスコアのような代理値(プロキシ値)で構わないとされています。

作り方は3ステップです。

  • (1)ファネルを書き出す:資料請求 → 問い合わせ → 商談 → 成約、のように自社の段階を並べる
  • (2)段階ごとの到達率と価値を概算する:たとえば資料請求の10%が商談化、商談の30%が成約、成約1件の粗利50万円なら、逆算で商談1件=約15万円、資料請求1件=約1.5万円の期待値になる
  • (3)キリのよい比率に丸める:資料請求1,000円・問い合わせ5,000円・商談5万円のように、比率を保ったまま扱いやすい数字にする

深い段階(商談化・成約)の値は、広告クリック時点では分からないため、CRM側の結果を後からGoogle広告に戻すオフラインコンバージョンの仕組みと組み合わせます。ここで注意したいのが遅延です。公式ヘルプでは、クリックからコンバージョン完了までの所要時間は短い(7日未満)ことが推奨され、クリックから7日以内にデータが得られない場合は立ち上げに数か月かかることがあると案内されています。「月末にまとめて1回」ではなく、少なくとも週2〜3回、可能なら日次で戻す体制を先に作っておきたいところです。

段階値付けの副産物として、「安いリードを量産する検索語句」と「商談になる検索語句」がレポート上で金額差として見えるようになります。値ベース入札に進む前でも、この可視化だけで除外や配分の判断材料が増えるのは大きな利点です。

値を設定したら終わりではなく、比率の答え合わせも仕組みにしておきます。月次で「広告経由リードの実際の商談化率・成約率」をCRM側で集計し、設計時に置いた到達率(資料請求の10%が商談化、など)と照合します。半年も回すと、チャネルや語句グループごとの実力値が見えてきて、値の精度を一段上げられます。この答え合わせのループこそが、値ベース入札を「設定して祈る」運用から「事業数値で調律する」運用に変える部分です。

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4. 実装方法:静的な値、動的な値、後から戻す値

Google広告側の実装は、大きく3パターンに整理できます。

静的な値:コンバージョンアクションごとに固定値

管理画面のコンバージョン設定(左メニュー「目標」配下)で、アクションごとに「すべてのコンバージョンに同一の価値を割り当てる」を選び、金額を入力します。資料請求と問い合わせで別のアクションを作り、異なる値を入れるだけでも「2種類以上の値」という条件は満たせます。最小工数で始められる入り口です。

動的な値:タグから取引ごとの金額を渡す

ECの購入金額のように取引ごとに変わる値は、Googleタグやタグマネージャーのイベントに値と通貨のパラメータを載せて渡します。データレイヤーとは、サイト側がタグに渡す情報を一時的に置いておく変数の入れ物のことで、購入金額や商品IDはここを経由してタグに届きます。この整備が要るため、計測担当や制作会社との連携ポイントになります。

後から戻す値:オフラインコンバージョンで確定値を反映

拡張コンバージョン(リード向け)や、クリックごとに付与される識別子であるGCLIDを使い、CRMで確定した商談・成約を値付きでアップロードします。リードビジネスの段階値付けは、フォーム送信時点の静的な値と、後から戻す商談・成約の値の組み合わせで完成形になります。

なお、特定条件(地域やデバイスなど)で値に掛け目を入れる「コンバージョン値のルール」という機能もありますが、仕様や提供範囲は変更されることがあるため、使う際は最新のヘルプで確認してから設計に組み込むのが安全です。

5. 切り替え手順:値を貯めてから入札に使う

値の設計ができたら、すぐ入札戦略を変えたくなりますが、順番があります。公式ヘルプでは、価値に基づく入札を有効にする前に、3週間またはコンバージョンサイクル1〜2周分(どちらか長いほう)にわたって価値データをアップロードすることが推奨されています(2026年8月時点)。

  • (1)値の計測を開始し、既存の入札戦略のまま3週間(またはコンバージョンサイクル1〜2周分)走らせる
  • (2)「コンバージョン値 ÷ 費用」で実績ROASを確認する
  • (3)まず「コンバージョン値の最大化」(目標なし)か、実績に近い目標を置いたtROASへ切り替える
  • (4)2〜4週間は目標を動かさず、週次で件数・値・費用の3点を観察する

件数の目安も押さえておきます。tROASの場合、検索・ショッピングでは過去30日に15件以上のコンバージョンが必要とヘルプに記載されています(2026年8月時点)。届かない場合は、ポートフォリオ入札で複数キャンペーンを束ねる、値だけ計測して入札は件数ベースを続ける、といった中間形を挟むのが現実的です。tROAS自体の初期値の決め方はtROASの設定手順と落とし穴で詳しく書いています。

切り替え後の評価指標も先に決めておきます。件数ベースからの移行では、CV件数がやや減って値の合計が増える、という動き方が成功パターンであることも多く、件数だけ見ていると「悪化した」と誤読しがちです。週次で「費用」「CV件数」「コンバージョン値」「値÷費用」の4つを並べ、切り替え前の同じ長さの期間の平均と比較する表を用意しておくと、社内報告でも判断がぶれません。

6. よくあるつまずきと点検ポイント

値ベース入札の不調は、入札より値の側に原因があることが多い印象です。よく見つかるのは次の3つです。

  • 値の桁ズレ:通貨設定の誤りやタグの実装ミスで10倍・100倍の値が混ざると、学習がその1件に引っ張られます。コンバージョンレポートで値の分布を見て、異常値の有無を確認します
  • 値ゼロの混在:入札対象のアクションに値なしのCVが混ざると、そのCVは価値ゼロとして扱われ、獲得が抑制される方向に働きます。参考計測にしたいアクションは入札対象から外します
  • 値の設計が古いまま:商材構成も粗利率も商談化率も変わります。半年に1回は比率を見直す前提でカレンダーに入れておくと、入札が古い価値観で走り続けるのを防げます

値の設計は、事業の変化を機械に伝え続ける翻訳作業です。見落とされがちなのが社内合意で、これは「どの顧客を優先するか」という事業判断そのものです。運用担当者が管理画面の中だけで決めると、営業や経営との認識ズレが起きます。「資料請求よりセミナー申込を3倍の価値とみなす」といった設定は、営業側の実感と合うかを一度すり合わせておくと、あとで「なぜこのリードばかり増えるのか」という揉め事を防げます。

7. 値ベース入札に移る前に確かめておきたいこと

値ベース入札は、正しく設計すれば「売上や粗利の大きい問い合わせを優先して取りにいく」動きを媒体側に任せられます。ただし前提が崩れていると、件数ベースのときより成果が読みにくくなります。切り替えの前に、次の4点を数字で確かめておくと戻り作業が減ります。

  • 値が入っているコンバージョンの割合。値ゼロや値なしのコンバージョンが混ざっていると、機械はそれを「価値のない成果」として扱います。管理画面の「目標」からコンバージョンアクション別に値の有無を確認し、9割以上に値が入っている状態を目安にします。
  • 値のばらつき。最小と最大が100倍以上離れていると、少数の大口に引っ張られて配信が偏ることがあります。極端な外れ値は上限を設けて丸めるか、別のコンバージョンアクションに分けるほうが安定します。
  • 値が確定するまでの日数。受注ベースの値を返す設計では、値が入るまでに数週間かかることがあります。その間、入札に使えるデータは実質的に空白になるので、暫定値を先に入れて後から更新する二段構えにするか、値の確定が早い中間指標を使うかを決めておきます。
  • 過去データの整合。値の付け方を途中で変えると、変更前後の目標広告費用対効果は比較できません。切り替え日を記録し、レポートでも期間を分けて見る前提にしておきます。

この4点が整っていれば、あとは値を貯めながら段階的に入札を移すだけです。逆に、どれか1つでも大きく崩れているうちは、無理に値ベースへ進むより、まず件数ベースで安定させたほうが早いことが多いと感じています。

あわせて、値の根拠をドキュメントに残すことも実務では効きます。「資料請求は3,000円、無料相談は15,000円」と決めたとき、その数字がどの受注率と平均単価から来ているのかを1枚に書いておく。根拠が失われると、事業側の単価が変わっても誰も値を直せなくなります。

よくある質問

Q. リードの値は適当な金額でも入札に悪影響はありませんか?

A. 絶対額のズレより、CVの種類や段階の間の「比率」のズレのほうが影響が大きいと言われます。資料請求と商談の価値比が実態で1:10なのに1:2で設定すると、安いリードに寄る方向に働きます。まずは概算でよいので比率を実態に近づけ、商談化率などの実績が貯まったら見直す運用が現実的です。

Q. 値を設定するだけで、入札戦略は今のままでも意味がありますか?

A. あります。件数ベースの入札のままでも、検索語句やキャンペーンごとのコンバージョン値がレポートで見えるようになり、除外や予算配分の判断材料になります。むしろ値の計測を先に始めて基準を作る期間が、値ベース入札への移行手順としても推奨されています。

この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。

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