ChatGPTに広告の相談をするときの前提の渡し方:初心者が間違えるプロンプト
結論から言えば、ChatGPTに広告の相談をして「一般論しか返ってこない」のは、質問の前に渡すべき前提が5つ足りないからです。成果の定義と目標値、期間を固定した実数、アカウントの構成、動かせない制約、欲しい答えの形。成果の定義とは、コンバージョン(CV、問い合わせや購入などの成果地点のこと)を何にするかと、CPA(CV1件あたりにかかった広告費)の目標のことです。この5つを最初に書くだけで、返ってくる答えは「CPAを下げるには広告文の改善や除外キーワードの追加が有効です」から、「目標CPA8,000円に対して実績1万2,000円、乖離が5割なので、入札の目標値を触る前に検索語句上位20件の精査を先にすべきです」に変わります。
ChatGPTは、あなたのアカウントを見ていません。管理画面にも、先月のレポートにも、社内で決めた目標にもアクセスできない。渡した文字だけが、相手の持っている材料のすべてです。材料が「CPAが高いです」の8文字なら、返る答えは8文字分の一般論にしかなりません。
この記事の要点
- 渡す前提は5つ。成果の定義・期間固定の実数・構成・制約・答えの形
- 初心者の失敗は「結果だけ渡す」「期間を書かない」「前の会話を覚えていると思う」「答えをそのまま入稿する」の4つ
- 顧客の氏名やメールアドレスを貼らないこと。学習に使われない設定は会話の前に確認する
- 答えの検証先は管理画面。ChatGPTは仮説を出す道具で、採点はできない。
新しい施策を足す前に、今の広告の予算配分と計測が整っているかを点検した診断の例をご覧いただけます。
サンプルを見る(無料・その場でダウンロード)1. 的外れな答えが返る本当の理由
「Google広告のCPAが高いです。どうすればいいですか」。この相談文に対してChatGPTができる最善は、CPAが高くなる原因を網羅的に並べることです。実際そう返ってきます。キーワードの見直し、広告文の改善、LP(広告のリンク先ページ)の最適化、入札戦略の調整、ターゲティングの絞り込み。どれも正しく、どれも自社には当てはまるかどうか分かりません。
人間の運用者に同じ相談をすると、まず質問が返ってきます。「CPAはいくらで、目標はいくらですか」「いつからですか」「何を変えました?」。この質問に答える情報を、最初から書いておく。それが前提を渡すということで、プロンプトの技術というより、相談の作法に近い話です。
材料が足りないとき、ChatGPTは聞き返すより埋めるほうを選びがちです。目標CPAを書かなければ「一般的な目安」で話を進め、業種を書かなければBtoCのEC前提で、予算を書かなければいくらでも増額できる前提で答えが組まれる。埋められた前提は、答えの中に見えない形で混ざります。そこが怖いところで、もっともらしい答えほど、どの前提の上に立っているかが読み取れません。
2. 渡す前提は5つ
| 前提 | なぜ要るか | 書き方の例 |
|---|---|---|
| ①成果の定義と目標値 | CVが何かで打ち手が変わる。目標がなければ「高い」が判定できない | CVは資料請求フォームの送信。目標CPA8,000円、月20件 |
| ②期間を固定した実数 | 「悪化」の大きさと方向が分からないと原因を絞れない | 9/1〜9/28:費用24万円、クリック1,600、CV20、CPA1万2,000円。8/4〜8/31:費用22万円、クリック1,500、CV27、CPA8,148円 |
| ③アカウントの構成 | 検索かP-MAXか、入札戦略が何かで、同じ症状でも原因候補が違う | 検索キャンペーン2本(指名・一般)、一般は目標CPA入札、部分一致中心、日予算1万円 |
| ④動かせない制約 | LPを直せない、予算を増やせない、業種の広告規制がある、を先に伝えないと使えない案が返る | LPの改修は10月まで不可。予算は据え置き。医療広告ガイドラインの対象業種 |
| ⑤欲しい答えの形 | 網羅ではなく優先順位と根拠が欲しいことを言わないと、一覧が返る | 原因の候補を3つまで、確からしい順に、それぞれ管理画面で何を見れば確かめられるかを添えて |
②の実数は、2期間を並べるのが肝です。先月と今月、あるいは変更前28日と変更後28日。表の例では、クリックは1,500から1,600へ7%増えているのにCVは27件から20件へ26%減っていて、CVR(コンバージョン率、クリックのうち成果に至った割合)が1.8%から1.25%に落ちています。ここまで書けば、ChatGPTは「クリックの質か、LP側か、計測の欠落」まで絞って答えられます。費用とCPAだけ渡すと、この絞り込みができません。
④の制約には、法令も入ります。医療、金融、人材、不動産のように広告表現に業法の規制がある業種では、制約を書かないと「ビフォーアフター写真を使った訴求」のように、その業種では出せない案が平気で返ってきます。ChatGPTは規制の存在をある程度知っていますが、自社がその対象かどうかは知りません。規制の該当判断そのものは、最終的に専門家の確認を推奨します。
3. 初心者が間違えるプロンプト4パターン
失敗の型は4つに集約されます。どれも、慣れた人も最初はやっています。
結果だけ渡す型。「CPAが上がりました」と書いて、いつから、いくらからいくらへ、何を変えた後か、を書かない。直すには、②の実数と「最近の変更」を1行足します。「9/10に一般キャンペーンの目標CPAを9,000円から7,000円に下げた。その後CPAが上がった」。この1行があるだけで、答えは「目標値を下げすぎて配信が絞られ、安いクリックに寄った可能性」まで届きます。
期間を書かない型。「先月より悪い」の先月が何日から何日か、直近7日なのか28日なのかで、反映遅れのCVの影響がまるで違います。直近7日の数字を渡せば、ChatGPTは「悪化した」前提で原因を探し始め、実際には2週間後に数字が戻る、ということが起きます。期間は日付で書く。これだけです。
前の会話を覚えていると思う型。新しいチャットを開けば、前回渡した前提は消えています。メモリー機能が有効でも、アカウントの数字のような細部まで保持されている保証はなく、毎回5つの前提を貼り直すほうが早いです。テンプレートをメモ帳に置いておき、数字だけ更新して貼る運用にすると、1回あたり3分で済みます。
答えをそのまま入稿する型。これがいちばん危険で、ChatGPTの出した広告文や除外キーワードをそのまま反映すると、商標や業法の規制に触れる表現、自社では使えない訴求、存在しない機能名が混ざります。広告文の場合の注意は「ChatGPTで広告文を作る手順」に、画像も含めた法的な注意は「AI生成クリエイティブの著作権と景表法」に書きました。答えは仮説。採用するかどうかの判定は、管理画面の実データで行います。
4. テンプレートと、答えの受け取り方
5つの前提を1枚にしたテンプレートを置きます。数字と固有名詞を差し替えて使ってください。
あなたは検索広告の運用者です。以下の前提で相談に乗ってください。
【事業】BtoB向け会計ソフトの資料請求獲得。CVは資料請求フォーム送信。目標CPA8,000円、月20件。
【実数】9/1〜9/28:費用24万円、クリック1,600、CV20、CPA1万2,000円。8/4〜8/31:費用22万円、クリック1,500、CV27、CPA8,148円。
【構成】検索キャンペーン2本(指名・一般)。一般は目標CPA入札、部分一致中心、日予算1万円。9/10に一般の目標CPAを9,000円から7,000円へ変更。
【制約】LP改修は10月まで不可。予算は据え置き。
【欲しい答え】原因候補を確からしい順に3つまで。それぞれ、管理画面のどの画面で何を見れば確かめられるかを添える。前提に不足があれば、答える前に質問してください。
最後の1文が効きます。「不足があれば先に質問して」と書いておくと、ChatGPTは埋めるのではなく聞き返すようになり、自分が渡し忘れた前提が何かも分かります。返ってきた3つの候補は、指示した画面で順に確かめる。候補1が「目標CPAの引き下げで配信が安いクリックに寄った」なら、検索語句レポートを9/10の前後で比べて、無関係な語句の比率が上がっていれば仮説は当たり、変わっていなければ候補2へ。この往復が、相談の本体です。
ここで1つ、構造的な限界があります。ChatGPTの候補を管理画面で確かめる作業は、自分の設定を自分で採点する作業と同じ形をしていて、候補が「9/10の目標CPA変更が原因」だったとき、その変更をした本人は、変更が正しかったと信じたい側に立っています。AIは仮説を出せても、その仮説を検証する人の立場までは変えられません。相談相手がAIになっても、採点者が自分のままなら、見落としの構造は残ります。
※ ChatGPTの仮説を、設定した本人以外の目で確かめたい方へ ― 読み取り専用の権限だけでアカウントの状態を確認する月次診断があります。実際の診断レポートのサンプル(無料)で、何がどう評価されるかをご覧ください。
5. 渡してはいけない情報と、データの扱い
前提を渡すとき、貼ってはいけないものもあります。顧客の氏名・メールアドレス・電話番号の列はCSVから削ってから貼り、未公開の売上や粗利も「目標CPAの根拠」以上の生データは要らない、というのが基本で、CSVの渡し方は「広告レポートをAIに要約させる方法」に手順があります。
学習への利用も確認しておきます。OpenAIのヘルプセンターによると、個人向けのChatGPTでは設定の「データコントロール」にある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすれば新しい会話はモデルの学習に使われず、一時チャットを使えば履歴にも残らず学習にも使われません。一時チャットは安全確認のため最大30日保持されると説明されています。Business、Enterprise、Eduのワークスペースでは、初期設定で学習に使われない扱いです。会社のアカウントがどのプランで、設定がどうなっているかは、相談を始める前に1度だけ確かめておけば済みます。
個人情報の扱いは法令にも関わります。顧客データの外部サービスへの入力が自社の個人情報保護方針や個人情報保護法上どう位置づけられるかは、業種や契約で変わるので、判断に迷う場合は専門家の確認を推奨します。
6. 相談相手は増えたが、採点者は変わっていない
ChatGPTは、前提を正しく渡せば、経験3か月の担当者にとって頼れる相談相手になります。深夜でも聞ける。何度聞いても嫌な顔をしない。知らない用語は横で説明してくれる。相談のハードルが下がったことで、1年前なら代理店の定例会まで待っていた疑問がその場で仮説に変わるようになりましたが、その仮説に点を付ける人の数は、1年前から増えていません。
前提5つのテンプレートを作り、期間と実数を日付で渡し、答えを管理画面で確かめる。ここまでは今日から自分でできる作業で、相談の質は渡す前提の質で決まります。できないのは、確かめた結果を「正しい」と判定する役を、その設定をした自分から切り離すことです。AIが出した仮説も、自分で立てた仮説も、採点するのが同じ人なら同じ偏りが乗る。ChatGPTが相談相手として役に立つかどうかは、プロンプトの質より、その採点者をどこに置くかで決まります。
※ AIに相談しながら自社で回す運用を、月1回の定点で見てほしい方へ ― 今の代理店や運用体制を替える必要はありません。実際の診断レポートのサンプル(無料)を用意しています。
よくある質問
Q. 無料版のChatGPTでも、この相談の仕方で十分ですか?
A. 前提5つを渡す作法は、無料版でも有料版でも同じように効きます。違いが出るのは、長い実数や複数キャンペーンの比較を一度に渡したときの処理量と、ファイルの読み込みなどの機能面です。まず無料版でテンプレートを回し、相談の頻度が週2回を超えてから有料版を考える、という順で困ることはありません。データの学習利用の設定だけは、プランに関係なく、使い始める前の確認事項です。
Q. 代理店に聞く代わりにChatGPTに相談するのは、失礼になりませんか?
A. なりません。むしろ、ChatGPTで仮説を立ててから代理店に「この3つのどれが近いですか」と聞くほうが、定例会の密度は上がります。注意したいのは、ChatGPTの答えを代理店への指示として渡すことで、仮説と検証結果を分けずに「AIがこう言っているので変えてください」と伝えると、代理店側は根拠のない変更を押し付けられた形になります。仮説として共有し、検証は一緒にやる。この順なら関係は壊れません。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
実際のカルテ(サンプル)をその場でダウンロード
ご入力後、その場でサンプル(PDF・一部抜粋)をダウンロードできます。まず中身を見たい方向けです。
