Microsoft広告の始め方:BtoBで検討する価値はあるか
Google広告の主要キーワードはインプレッションシェアが頭打ち、Meta広告も一通り試した。次の一手を探しているときに名前が挙がるのがMicrosoft広告です。「BtoBに強いらしい」と聞いてはいるものの、検索シェアの小ささが気になって手を出せていない。そんな相談を、月予算100万円前後のBtoB企業からよく受けます。
先に結論の方向を言うと、Microsoft広告はGoogle広告の代わりにはなりませんが、条件が合う広告主にとっては「少ない工数で試せる補完媒体」です。特にBtoBやデスクトップ経由の比率が高い商材では、Google広告より低いクリック単価でコンバージョン(CV)が取れたという報告が少なくありません。この記事では、日本での現状、始め方の手順、出稿判断の軸を順に整理します。
この記事の要点
- Microsoft広告は2022年5月31日に日本での展開開始が発表された媒体。StatCounterの集計では2026年7月時点の国内デスクトップ検索でBingが4割超を占める一方、モバイルを含めるとGoogleが依然優勢
- 業務用PCのWindows・Edge経由で届くため、勤務時間帯に調べもの・比較検討をするBtoB層と相性が良いと言われる
- Google広告のキャンペーンをインポートして始められるが、インポート後に直すべき設定がある
- 規模はGoogle広告の1〜2割程度が目安。主力媒体が頭打ちになってから検討するのが順序
1. Microsoft広告とは:2022年の日本上陸から現在まで
Microsoft広告は、検索エンジンBingを中心としたMicrosoftの広告配信サービスです。米国など海外では以前から提供されていましたが、日本では2022年5月31日に日本マイクロソフトが日本での展開開始を発表し、そこから本格的に提供が始まりました。配信先はBingの検索結果のほか、MSN、Outlook.com、ブラウザのMicrosoft Edge関連面、提携パートナーサイトなどに広がっています。
「Bingなんて誰が使っているのか」という反応は今でもよく聞きます。ただ、直近の数字を見ると印象が変わるはずです。調査会社StatCounterの公開データでは、2026年7月時点の日本のデスクトップ検索シェアはGoogleが約50%、Bingが約45%となっています。国内の解説記事が引用する2026年2月時点の同社データでも、デスクトップはGoogle約55%・Bing約38%、モバイルを含めた全体ではGoogle約66%・Bing約24%、モバイル単体ではBingは1%に満たない水準でした。アウンコンサルティングが2026年4月2日に公表した調査(StatCounterのデータを参照したもの)でも、日本のPC検索でGoogleのシェアが前回調査(2025年4月公表)と比べて20%以上下がり、Bingが20%以上上がったと報告されています。ただしStatCounterはページビューをもとにした集計で、実際の利用者比率とは乖離があると指摘されることも多く、具体的な数値は集計元と時点つきで、幅を持って受け取るのが安全です。いずれの集計でも共通しているのは、「モバイルでは存在感が薄いが、デスクトップでは無視できない規模になってきた」という傾向のほうです。
背景はシンプルで、Windowsパソコンでは標準ブラウザがEdge、既定の検索エンジンがBingに設定されているからです。自分でChromeに切り替えない層、そして会社の管理ポリシーで既定設定のまま使っている層が、そのままBingの検索ユーザーになります。つまりBingのユーザーは「Bingを選んだ人」ではなく「会社支給のPCで検索する人」を多く含む。ここがBtoBとの相性の話につながります。
広告の仕組み自体はGoogle広告とよく似ています。キーワードに入札し、オークションで掲載順位が決まり、クリック課金で費用が発生する。マッチタイプや除外キーワード、自動入札といった概念も共通です。つまり、Google広告の運用ノウハウがある会社にとって、学習コストはかなり低い媒体だと言えます。
2. BtoBと相性が良いと言われる理由
Microsoft広告がBtoB向きとされる根拠は、ユーザーの属性と利用シーンにあります。日本マイクロソフトへのインタビュー記事(Web担当者Forum・2023年9月6日公開)では、Microsoftアカウントユーザーの平均年齢は44歳で、年収レンジが高く、決裁権限を持つ意思決定者の割合が多いと語られています。媒体側の発信なので割り引いて読む必要はありますが、「業務用PCからの検索が多い」という構造を考えると、方向性としては納得感があります。
実務での肌感も近いものがあります。平日の日中、就業時間帯にデスクトップからの検索が集中する。検索語句レポートを見ると「〜 比較」「〜 導入 費用」のような検討系の語句が拾える。BtoBのリード獲得では、この「勤務中の調べもの」を捕まえられるかが勝負なので、配信面の性質がそのまま強みになります。
自社が当てはまるかを確かめる簡単な方法があります。Google広告の管理画面でデバイス別のレポートを開き、コンバージョン(CV)に占めるパソコンの比率を見てください。この比率が5割を超えているなら、Bingのデスクトップユーザーにも同じ検討行動をする人がいる可能性が高い。実際、製造業の部材調達、業務システム、法人向け保険、士業向けサービスといった「会社のPCで比較検討される商材」で、Microsoft広告のCPAがGoogle広告を下回った事例は複数見てきました。逆にモバイルCVが大半を占めるBtoC商材では、そもそも母数が足りずに検証が終わらないことが多いです。
一方で、過度な期待は禁物です。LinkedInのプロフィール情報(会社名・業界・職種)を使ったターゲティングはMicrosoft広告の目玉機能として紹介され、日本でも2024年5月29日に正式提供が始まりました。ただし国内のLinkedIn利用者数は限られるため、条件を重ねるほど配信ボリュームが落ちます。また、これらの項目でターゲットを絞り込めるのはオーディエンス広告キャンペーンで、検索広告や動的検索広告、ショッピングキャンペーンでは入札単価の調整に用途が限られる、という制約もあります。日本のBtoBでの価値は、現時点では「特殊なターゲティング」よりも「デスクトップのビジネス層に検索連動で届く」こと自体にあると考えたほうが実態に合います。
3. 始め方:Google広告インポートを軸にした立ち上げ手順
アカウント開設自体は難しくありません。Microsoft広告の公式サイトからアカウントを作成し、ビジネス情報と支払い方法を登録すれば、その日のうちに配信準備に入れます。日本語の管理画面とサポートが用意されており、画面の構成もGoogle広告に似ているため、リスティング広告の運用経験があれば迷う場面は少ないはずです。
そのうえで、立ち上げで最も現実的なのは、既存のGoogle広告キャンペーンをインポートする方法です。管理画面にGoogle広告アカウントを連携すると、キャンペーン構造、キーワード、広告文、入札設定などをまとめて取り込めます。ゼロから作る場合に比べて、初期構築の工数は大幅に小さくなります。
ただし「インポートして配信開始」で終わらせると事故のもとです。取り込んだあとに、最低限次の項目は手で確認します。
インポート後に必ず確認する設定
- コンバージョン計測:Microsoft広告独自の計測タグ(UETタグ)をサイトに設置し、CVを定義し直す。Google広告のCV設定は引き継がれない
- 予算と入札:日予算の水準がそのまま移るため、媒体規模に合わせて縮小する。自動入札は学習データがない状態で始まるので、最初は手動入札やクリック数重視から様子を見る選択肢もある
- 除外キーワード:除外リストが正しく移っているか。マッチタイプの挙動差で漏れが出ることがある
- 配信面:検索パートナーやオーディエンス面(Microsoft Audience Network)への拡張が有効になっていないか。まずは検索面に絞るほうが検証しやすい
インポートは一度きりでなく、定期的な同期も設定できます。ただ、Google側の変更を無条件に流し込み続けると、Microsoft側の実情に合わない設定が上書きされることもあるため、同期範囲は絞っておくのが無難です。
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4. 出稿判断の軸:向いているケース、後回しでよいケース
Microsoft広告を試す価値が高いのは、次のような条件に当てはまる場合です。
- Google広告で主要キーワードのインプレッションシェアが8割前後まで達しており、検索面の拡張余地が少ない
- BtoB商材、または高価格帯・検討期間の長い商材で、デスクトップ経由のCV比率が高い
- Google広告のアカウント構成が整理されており、インポート元としてそのまま使える
逆に、後回しでよいのは、Google広告にまだ明確な伸びしろがある場合です。除外キーワードの整備や入札戦略の調整で主力媒体のCPAを下げられる状況なら、そちらが先です。検索ボリュームが小さいニッチ商材の場合も、Bingではさらに母数が減るため、月に数件のクリックしか出ないことがあります。月予算の目安としては、まず5〜10万円程度の枠を切り出して1〜2か月検証し、CVが付くようなら増額を検討する、という順序が現実的です。
Yahoo!広告との優先順位を聞かれることも増えました。一般論としては、検索ボリュームはYahoo!のほうが大きく、拡張の第一候補になりやすい。一方で、ユーザー層の重なりで見ると、Yahoo!はGoogleと近いのに対し、Microsoft広告は「業務PCのビジネス層」という別の切り口を持ちます。BtoB商材でデスクトップ比率が高いなら、Yahoo!を飛ばしてMicrosoft広告を先に試す判断もあり得ます。どちらも「Googleの検索面が頭打ちになってから」という前提は同じです。
5. 運用の注意点:規模感の見積もりと月次で見る指標
実際に配信を始めると、多くのアカウントで「クリック単価はGoogle広告より安いが、表示回数もクリック数も少ない」という結果になります。獲得規模はGoogle広告の1〜2割程度に収まることが多いと言われており、この媒体単独で月間のリード目標を背負わせる設計には向きません。あくまで補完枠として、CPA効率の良い上澄みを取りにいく位置づけです。
月次のチェックでは、CPAとCV数に加えて検索語句レポートを必ず見ます。ボリュームが小さいぶん、意図のずれた語句が数件混ざるだけでCPAが大きくぶれるからです。除外キーワードの追加はGoogle広告以上に効きます。また、CV数が少ない状態で自動入札に切り替えると学習が安定しないため、入札方式の変更は月間CV数がある程度たまってからで十分です。
広告文の検証も、Googleでの勝ちパターンをそのまま信じないほうがよい領域です。ユーザーの年齢層が高めであることを踏まえると、流行の言い回しよりも、導入実績や対応範囲を具体的に書いた堅めの訴求が反応を取ることがあります。母数が少ないためテストに時間はかかりますが、月次で1パターンずつ入れ替える程度の検証は続ける価値があります。
もう一つの落とし穴は「インポートしたまま放置」です。Google側でキャンペーンを再編したのにMicrosoft側が古い構成のまま動き続け、誰も見ていない広告費が毎月流れていた、という診断事例は珍しくありません。補完媒体こそ、月次で予算と成果を突き合わせる仕組みをセットにしておくことが大切です。
よくある質問
Q. Microsoft広告はいくらから始められますか?
A. 最低出稿金額の縛りは実質なく、少額から始められます。実務では月5〜10万円程度を検証枠として切り出し、1〜2か月でCVが付くかを確認する進め方が多いです。検索ボリュームがGoogle広告より小さいため、大きな予算を最初から積んでも消化しきれないことがあります。
Q. Google広告のキャンペーンをそのままインポートすれば運用できますか?
A. インポート機能で構造は移せますが、そのまま配信開始はおすすめできません。コンバージョン計測用のUETタグ設置、予算と入札方式の見直し、除外キーワードの確認、配信面の絞り込みは最低限手を入れる必要があります。特にCV計測は引き継がれないため、未設定のまま走らせると成果判断ができなくなります。
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この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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