広告からの問い合わせの質が低い:冷やかしと営業電話を減らす3つの設計
「件数は目標どおり取れているんです。ただ、開けてみると中身がひどくて」。広告からの問い合わせが月30件、そのうち商談になったのは3件で、残りは情報収集だけの学生や同業者、こちらを見込み客ではなく販売先と見た営業電話、予算が1桁合わない相談。リード獲得の広告を回している会社から、この種の相談は本当によく届きます。
問い合わせというコンバージョン(CV、問い合わせや購入などの成果地点のこと)の件数だけを目標にすると、広告は放っておいても「誰でも問い合わせしやすい広告」に寄っていきます。つまり質の低さは運の問題ではなく、キーワードの広さ・広告文の期待値・フォームの通しやすさという3カ所の設計の結果です。裏を返せば、この3カ所を直せば質は動かせます。商談化の結果を広告の学習に返す設定手順は既存記事にまとめてあるので、この記事は、返す仕組みの前に、そもそも入口で何を呼んでいるかを直す話です。
この記事の要点
- 問い合わせの質の低さは、キーワードの広さ・広告文の期待値・フォームの絞り込み不足という3つの設計の結果
- 打ち手は、入口で絞る(除外キーワード)、途中で期待値を合わせる(条件の明示)、出口で確認する(フォーム項目)の3段構え
- 絞ると件数は減るが、商談1件あたりの単価で見ると改善していることが多い。評価指標を問い合わせ単価から商談単価へ
- 商談化・受注の結果を広告の学習に返すと、媒体が「質の高い人」に似た人を探しに行くようになる
1. 「質が低い」の中身を3種類に分ける
ひとくちに質が低いと言っても、中身は3種類に分かれ、それぞれ発生源が違うので、まず自社の直近1〜2カ月の問い合わせ一覧を、次の3つに仕分けしてみてください。どれが多いかで、直す場所が決まります。
| 症状 | 主な発生源 | 効く打ち手 |
|---|---|---|
| 情報収集・冷やかし | 「とは」「やり方」「無料」など広い検索語句を拾っている | 除外キーワードと広告文での対象の明示 |
| 営業電話・売り込み | 広告露出で連絡先が「窓口」として目立つようになった | フォームの用途分岐、電話CVの扱いの見直し |
| 予算・条件が合わない | 広告文とリンク先に価格帯・対象条件の記載がない | 条件の明示とフォームでの選択式確認 |
仕分けの前提として、「良い問い合わせ」の定義を営業側と1行で合意しておくと、後の議論がすべて速くなります。たとえば「予算月30万円以上・3カ月以内に検討・決裁者または起案者」のような形で、定義のないまま「質が低い」とだけ言われても、広告側は直しようがありません。逆に定義さえあればいい。この後の打ち手はすべてその1行に向けて設計できます。定義は完璧である必要はなく、四半期に1回見直す前提の仮置きで十分です。
仕分けてみると、配分は会社ごとにはっきり違います。冷やかしが7割ならキーワードと広告文、営業電話が半分を占めるなら受け口の設計、条件不一致が中心なら価格や対象の表記と、いちばん多いカテゴリがそのまま最初に直す場所を指しています。主犯の見当はここでつきます。
2. 原因①:キーワードが広く、来なくていい人まで呼んでいる
検索広告なら、最初に見るのは検索語句レポートです。たとえば「業務システム 開発」で出稿しているつもりでも、マッチタイプ(部分一致)の拡張によって「業務システム 開発 独学」「業務システム 開発 求人」まで広告が出ていることがあります。開発を独学したい人や職を探している人がクリックすれば、広告費は使われ、ときどき問い合わせまで届きます。経験上、絞り込みをしていないアカウントでは、クリックの2〜3割が意図と違う検索語句に流れていることも珍しくありません。
対処は月1回、検索語句レポートを開いて意図外の語句を除外キーワードに登録することで、典型的な除外候補は「とは」「やり方」「自分で」「無料」「求人」「アルバイト」「テンプレート」あたり。ただし機械的に入れてはいけません。無料相談を入口にしている商材なら「無料」の除外は逆効果ですし、採用サイトも運用しているなら「求人」の扱いは社内で確認が要ります。最初の1回は直近90日分をまとめて見るのが効率的で、表示回数の多い順に上から50語句だけ確認すれば、意図外の型(情報収集系・求人系・無料系)はあらかた見つかります。2回目以降は月1回、前回以降の新出語句だけ見れば10分で終わります。具体的な手順は「検索語句レポートと除外キーワードの使い方」に詳しくまとめています。
浪費の規模も数字にしておきます。月30万円の予算でクリックの25%が意図外の語句に流れているなら、月7.5万円、年間で90万円が「来なくていい人」への支払いです。除外キーワードの登録自体は30分あればできる作業なので、時間対効果でいえば、広告運用の中でも指折りに割の良い仕事だと言えます。
なお、P-MAXやMeta広告のように語句や配信先が細かく見えない配信では、除外でコントロールできる範囲が狭まります。見えないものは除外できません。その場合は、次に述べる広告文とフォームの比重が上がると考えてください。
3. 原因②:広告文が期待値を設計していない
広告文が「誰でもお気軽にどうぞ」型だと、質は確実には上がりません。むしろ下げる方向に働きます。効くのは条件の明示です。「従業員50名以上の企業向け」「月額予算30万円からの支援」「法人専用」「東京23区対応」。こう書くとCTR(クリック率、表示回数のうちクリックされた割合のこと)は下がりますが、それは条件の合わない人がクリックしなくなったということです。クリック課金の広告では、絞る一文がそのまま広告費の節約になります。条件を書く場所は見出しが優先です。説明文は読み飛ばされることが多い。見出しの一語のほうがクリック前の選別として働きます。
LP(広告のリンク先ページ)とフォームの直前でも同じ設計が要ります。価格を明示できない商材でも、目安のレンジや導入企業の規模感は書けるはずです。広告文で絞り、LPで裏付け、フォーム前で再確認する。期待値の設計はこの3点で1セットです。
件数が減ることを恐れる必要はありません。数字で比べてみます。月30万円の予算で問い合わせ30件・商談3件なら、問い合わせベースのCPA(CV1件あたりにかかった広告費)は1万円、商談1件あたりでは10万円です。条件明示で問い合わせが15件に半減しても、商談が6件に増えれば、CPAは2万円に上がる一方、商談1件あたりは5万円と半分になります。どちらの広告が優秀かは、評価する指標で逆転するわけです。質の議論をするなら、評価軸を問い合わせ単価から商談単価に移すことが先決です。
逆方向の期待値エラーもあります。「業界最安値」「たった5分で」のような盛った広告文は、クリックと件数を稼ぐ代わりに、実物とのギャップで商談の空気を悪くします。問い合わせの席で「広告と話が違う」と言われた経験があるなら、絞り込み不足ではなく盛りすぎを疑ってください。期待値設計とは、絞ること。同時に、実物より大きく見せないことでもあります。
4. 原因③:フォームが誰でも通れる設計になっている
名前とメールアドレスだけのフォームは、件数の最大化には正しい。質の確保には働きません。予算感(選択式)、検討時期、会社名や部署。この種の項目を1〜2個足すだけです。温度の低い問い合わせはかなり減ります。
フォーム改善(EFO)で項目を減らす話と矛盾するようです。整理すると両立します。削るべきは「手間の項目」、残すべきは「絞りの項目」です。住所を番地まで書かせるのは手間でしかなく離脱を生むだけですが、予算レンジのプルダウン1つは、書く側の負担がほぼゼロのまま絞りとして働きます。項目の数ではなく、各項目が何の役に立っているかで判断してください。
営業電話への対処も設計でできます。問い合わせフォームの冒頭に「製品・サービスのご案内(売り込み)はこちら」と別リンクへ分岐させる、電話CVを成果から外すか別集計にする、通話計測を入れているなら一定秒数未満の着信を成果に数えない、といった方法です。営業電話は広告の成果ではないのに、電話CVとして計測されてCPAを見かけ上良くしてしまうことがあり、放置すると評価そのものが歪みます。
Meta広告のリード獲得でインスタントフォーム(広告内で完結する入力フォーム)を使っている場合は、とくに注意が要ります。入力欄が自動補完されるため送信の手間が極端に軽く、件数は伸びる一方で温度は下がりやすい形式です。意図確認の質問を1問足す、自動補完されない自由記述を1つ入れる、あるいはLPのフォームに切り替える。この3つが定番の調整です。
ここまで3カ所を挙げました。どれが主犯かは症状の見た目からは決まりません。冷やかしの多いアカウントでも、原因がキーワードの広さではなく広告文の書き方だったことも、フォームの導線だったこともあります。検索語句・広告文・フォーム項目を突き合わせて初めて主犯は決まるのに、その3つを毎日見ている人ほど、いまの形が「いつもの形」に見えてしまう。
※ どの設計が質を落としているのか、キーワード・広告文・フォームのどこから直すべきかをアカウントの中身から特定してほしい方へ ― 読み取り専用の権限だけで外部チェックは完結します。実際の診断レポートのサンプル(無料)を用意しています。
5. 質の情報を広告の学習に返す
ここまでは入口と出口の設計の話でした。もう1段先に、質の情報を広告の学習に返すという打ち手があります。いまの自動入札は「CVした人に似た人」を探しに行くため、CVの定義がフォーム送信のままなら、冷やかしの送信も営業電話の着信も媒体にとっては等しくお手本です。商談になったか・受注したかという営業側の判定をオフラインコンバージョンとして返せば、お手本が「送信した人」から「商談になった人」に変わります。返し方の設計は手順として「広告に「質」を返すオフラインコンバージョンの設定手順」にまとめてあるので、ここでは繰り返しません。
注意は順序だけです。返す仕組みは効き始めるまで1〜3カ月かかるため、今月の止血は除外と広告文とフォームで先に済ませ、計測はその裏で仕込む。入口が広いまま質だけを返しても、媒体は「広い入口の中では比較的マシな人」を探すだけで、呼んでいる相手の母集団そのものは変わりません。
この問題の性質をひと言で言い直しておきます。質の低い問い合わせは、広告の失敗というより「誰に来てほしいかを言語化していない」ことへの請求書であり、その宛先は、広告チームと営業の両方に届いています。営業担当の「こういう問い合わせは助かる」という一言が、そのまま最強の除外キーワードや広告文の一文になることは本当に多い。検索語句レポートと問い合わせ一覧を挟んだ30分の突き合わせ。ここまでは社内だけで進みます。詰まるのは、絞りの強さを決める段です。絞りすぎて件数を殺しているのか、まだ緩いのかは、自社の数字だけを見ていると「減った」という事実にしか映らず、商談単価まで含めて評価する段になると、利害の外にいる目が要ります。
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よくある質問
Q. 絞り込むと件数が減って、広告の学習に悪影響はありませんか?
A. CV件数が減れば自動入札の学習データも減るので、影響はゼロではありません。月のCVが数件まで落ち込むようなら絞りすぎの可能性があります。その場合は、学習用のCV地点をフォーム到達など一段手前に置いて件数を確保し、質は人の目で監視する設計が使えます。ただ、質の低いCVを学習させ続けるほうが長期的には高くつくので、多少の件数減を理由に絞りをやめる判断は勧めません。
Q. 営業電話が増えたのは広告のせいでしょうか?
A. 無関係ではありません。広告で社名や連絡先の露出が増えると、見込み客だけでなく売り込み側の接触も増えます。ただし、広告をクリックして電話してくる営業と、サイトに載っている番号を名簿から拾ってかけてくる営業は別物で、後者は広告を止めても減りません。電話CVを計測しているなら、着信元や通話時間を確認して、営業電話が成果に混ざっていないかを先に確かめると切り分けられます。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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