Google AI Modeに広告が入る:Marketing Live 2026の4形式を読み解く
「検索順位は落ちていないのに、流入だけが減っている」。2026年に入ってから、この相談を受ける回数が目に見えて増えました。原因の一つが、Googleの会話型検索「AI Mode」です。ユーザーはAIとの対話の中で答えを得てしまい、Webサイトまで来ない。集客をリスティング広告と自然検索に頼ってきた事業会社ほど、この変化を無視できなくなっています。
Google AI Mode広告とは、Google検索の会話型モード「AI Mode」の回答や対話の流れの中に表示される広告のことです。2026年5月20日に開催されたGoogle Marketing Live 2026で、Googleは会話型検索向けの新しい広告形式を4つ発表しました。従来の検索広告のように検索結果の上下に並ぶのではなく、AIが返す答えの内側に広告が組み込まれるのが最大の違いです。この記事では、米国側の報道を基に4形式の中身と「まだ分かっていないこと」を整理し、日本の広告主が月予算100万円規模でいま何を準備すべきかまで落とし込みます。先に言えば、慌てて何かを買う必要はありません。ただし計測とデータの足元を放置してよい理由もありません。
この記事の要点
- AI Modeの月間利用者は10億人超とGoogleが説明。Semrushの2025年の米国調査では、AI Modeセッションの92〜94%が外部クリックなしで完結していた
- Marketing Live 2026でAI Mode向けにConversational Discovery Ads・Highlighted Answers・AI-Powered Shopping Ads・Business Agent for Leadsの4形式が発表された
- 入札方式・計測・レポートの粒度など、運用者が知りたい詳細はまだ公開されていない
- 日本の広告主の準備は、CV計測の精度向上・フィードとファーストパーティデータの整備・ゼロクリック前提の指標設計の3つ
1. AI Modeとは何か:月間10億ユーザーの「会話する検索」
AI Modeは、Google検索に組み込まれた会話型の検索体験です。従来の「キーワードを入れて青いリンクを選ぶ」検索と違い、質問を投げるとAIが要約された答えを返し、続けて追加の質問ができます。Googleは2026年のI/Oで、AI Modeの月間利用者が10億人を超えたと説明しています。またSemrushが2025年5月1日〜7月5日の米国デスクトップ約6,900万セッションを分析した調査では、AI Modeのクエリは平均7.22語で、通常のGoogle検索の平均4.0語に対しておよそ2倍の長さでした。
ユーザーの行動も変わります。単語の羅列ではなく「予算30万円で、社員10人の会社に合う勤怠管理ツールを比較して」のような、要件を含んだ長文で聞く。この変化は広告の側から見ると、キーワードという単位が細り、「文脈と意図」が配信の単位になっていくことを意味します。部分一致やP-MAXでGoogleが進めてきた方向と地続きの話です。
使われ方の変化も報告されています。前述のSemrushの調査では、AI Modeの利用者は1セッションあたり平均2〜3回の検索にとどまり、通常のGoogle検索の約5回より少ない回数で目的を果たしていました。1回の質問が長く具体的になった分、言い換えを繰り返して探す必要が減っている、という読み方ができます。広告の側から見れば、同じ1件のニーズに対して接触できる画面の回数そのものが減っていくということです。なお、この調査は米国デスクトップに限った標本であり、日本のスマートフォン利用にそのまま当てはまるとは限らない点は割り引いて読む必要があります。
2. ゼロクリック問題:9割超のセッションが外部クリックなしで終わる
広告主にとって切実なのは、AI Modeがクリックをあまり生まないことです。Semrushが2025年5月〜7月の米国デスクトップ約6,900万セッションを分析した調査では、外部サイトへのクリックが発生したのは6〜8%にとどまり、92〜94%はGoogleの中で完結したと報告されています。10回の検索会話のうち9回以上は、誰のサイトにも着地しないまま完結する計算です。
文脈として押さえておきたいのは、ゼロクリック自体はAI Mode以前からの傾向だということです。SparkToroがSimilarwebのクリックストリームデータを用いて分析した結果では、2026年1〜4月の米国のGoogle検索のうち68.01%がクリックなしで終わっていました。またAI Overviews(検索結果上部のAI要約)が表示されると上位ページのクリック率が34.5%下がったとするAhrefsの2025年の調査も広く引用されています。AI Modeはこの流れを一段と加速させた、というのが正確な理解です。
この数字は推計であり、集計方法によって幅があります。それでも方向性は明確で、「検索結果からサイトへ呼び込み、LPでCVさせる」という10年来の型が、AI Modeの中では成立しにくい。だからこそGoogleは、答えの中に広告を組み込む形式を作りにきたわけです。ゼロクリック環境では、広告は「サイトへの入口」ではなく「会話の中の選択肢」として機能する必要があります。
3. Marketing Live 2026で発表された4つの広告形式
米Search Engine Landなどが報じたMarketing Live 2026の発表から、AI Modeに関わる4形式を整理します。いずれもGeminiを土台にした形式と説明されています。
Conversational Discovery Ads(会話の中で提案する広告)
AIとの対話の流れに沿って表示される、対話型の広告です。ユーザーが要件を伝えながら絞り込んでいく途中で、条件に合う商品やサービスが提案として差し込まれます。買い物相談に付き合う店員の横から、条件に合う商品を差し出すイメージに近いと言えます。
Highlighted Answers(回答内で強調される広告)
AIが生成する回答の中に、広告主の情報が「答えの一部」として強調表示される形式です。回答そのものに載るという性質上、情報の正確性と鮮度がこれまで以上に問われます。自社サイトやフィードの情報が古いままだと、そもそも採用されない可能性が高いでしょう。
AI-Powered Shopping Ads(文脈に合わせた商品広告)
会話の文脈から推定されたニーズに対して、商品カードを提示するショッピング広告です。既存のショッピング広告と同じく、Merchant Centerのフィード品質が生命線になると考えられます。価格・在庫・属性情報の正確さが、そのまま露出機会に直結する構図です。
Business Agent for Leads(リード獲得の会話エージェント)
リード獲得向けの形式で、ユーザーが広告主のエージェントと会話しながら、資料請求や問い合わせまで進める体験が想定されています。BtoBやサービス業のように「フォーム到達までの説得」が必要な商材にとって、LPの代わりに会話が説得を担う形式と言えます。
4形式に共通するのは、広告が「リンク」ではなく「体験の一部」になることです。クリックさせて連れ出すのではなく、会話や回答の中で役割を果たす。当然、広告文の書き方も、審査や品質評価の考え方も、従来の検索広告とは別物になっていくと考えられます。Marketing Live 2026ではこのほか、Google広告・アナリティクス・Merchant Center・Google Marketing Platformを横断するAIエージェント「Ask Advisor」や、Gemini搭載のクリエイティブ制作基盤「Asset Studio」の強化も発表されており、広告運用の全工程をAI前提で作り直す方向性が示されました。
4. まだ公開されていないこと:入札・計測・コントロールの詳細
運用者として正直に書いておくと、発表されたのは「形式」であって「運用仕様」ではありません。入札方式はどうなるのか。会話の中の表示はどうカウントされ、クリックやCVはどう計測されるのか。どのキャンペーンタイプから配信され、除外や配信面のコントロールはどこまで効くのか。これらの詳細は2026年8月時点で公開されていません。
過去のP-MAXやAI Maxの経験から推測すると、初期は「既存キャンペーンからの自動拡張」として始まり、広告主が個別に細かく制御できる余地は限定的になる可能性があります。であればなおさら、広告主側でコントロールできるのは「システムに渡すデータの質」だけになります。ここが次のセクションにつながります。
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5. 既存のリスティング広告はどうなるか
「AI Modeが主流になったら検索広告は終わりか」と聞かれれば、答えは「当面は終わらない。ただし比重は動く」です。従来型の検索は依然として巨大で、指名検索や緊急性の高いニーズ(鍵の紛失、水漏れ、近くの歯医者)は今も検索窓に直行します。検索広告の予算をいま切る理由はありません。
変わるのは評価軸です。AI経由の接点が増えるほど、クリックやセッションだけで広告を評価する方法は実態とずれていきます。指名検索数の推移、CVに占める指名経由の割合、GA4でのAI経由トラフィックの把握など、「クリックの外側」を見る指標を月次レポートに組み込んでおくと、変化を早く察知できます。GA4では2025年以降、生成AIサービスからの流入を切り分ける見方が整理されてきました(GA4「AIアシスタント」チャネルの見方で扱っています)。月次で数行足すだけの作業ですが、AI経由の接点が増え始めた時期を後から特定できるかどうかで、打ち手の速さが変わります。既存のリスティング広告の構造を整えておくことが、新形式が来たときの受け皿にもなります。
特に守りたいのは指名検索です。AI Modeの回答の中で自社が推薦されるか、競合が推薦されるかは、これからの集客の分水嶺になります。指名キーワードの広告と、指名検索の流入数・CV数の推移は、月次で必ず確認する項目に含めておくべきです。ここが崩れ始めたら、AI経由の情報流通で自社の扱いが変わったサインかもしれません。
6. 日本の広告主の準備:ゼロクリック前提で足元を固める
日本での提供時期は未公表ですが、Googleの新機能は例年、米国先行から数カ月〜1年程度で日本に順次展開されてきました。月予算100万円規模の広告主が、いまやっておく価値のある準備は3つです。
1つ目はCV計測の精度です。会話型の広告では、クリック計測の欠損を補うために拡張コンバージョンやオフラインコンバージョンの重要性がさらに増すと考えられます。計測が壊れたままの広告主は、新形式の自動入札に正しい成果を返せず、学習で不利になります。
2つ目はフィードとファーストパーティデータの整備です。ショッピング系形式はMerchant Centerフィード、リード系形式は顧客データとの突合が土台になります。フィードの属性充足率や顧客リストの鮮度は、いまのP-MAX運用にもそのまま効く投資です。
3つ目は情報の構造化です。Highlighted Answersのように「回答に採用される」形式では、自社サイトの情報が正確で、構造的で、AIに解釈しやすいことが前提になります。料金・対応範囲・FAQの整理は、広告とGEO(生成エンジン最適化)の両方に効く一石二鳥の施策です。派手さはありませんが、この3つが揃っている広告主から順に、新形式の恩恵を受けていくはずです。
逆にやらなくてよいのは、正体の分からない「AI Mode対策サービス」への先行投資や、詳細未公開の新形式を前提にした予算計画です。仕様が出ていない段階で確約できる対策は存在しません。月次の定例で「AI Modeと4形式の続報を確認する」という項目を一つ足しておく。月予算100万円規模の広告主にとって、現時点で必要な対応はその程度の軽さで十分です。
よくある質問
Q. AI Modeの広告は日本ではいつから使えますか?
A. 2026年8月時点で日本での提供時期は公表されていません。Marketing Live 2026で発表された4形式は米国先行で段階導入と見られます。過去の例では米国先行から数カ月〜1年程度で日本展開されることが多く、その間にCV計測・フィード・自社情報の構造化を整えておくのが現実的な準備です。
Q. AI Modeの普及で、いまのリスティング広告はやめるべきですか?
A. やめる必要はありません。指名検索や緊急性の高いニーズは依然として従来の検索に流れており、検索広告は当面主力のままです。ただしクリックだけに頼った評価は実態とずれていくため、指名検索数やAI経由の接点を含めた指標設計に少しずつ広げておくことが推奨されます。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
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