広告の成果を「先週比」で見てはいけない理由:比較期間の決め方
月曜の朝、先週のコンバージョン(CV、問い合わせや購入などの成果地点のこと)が減り、CPA(CV1件あたりにかかった広告費)が前の週より20%悪化していたら、設定を変えるべきでしょうか。答えは「まだ何も分からない」です。先週比が判断に使えないのは、週の切り方や祝日で曜日構成がずれる、CVが記録されきっていない、そもそも件数が少なすぎる、の3つが同時に起きているからです。比較期間は28日を1単位にし、終点を今日から14日前に置き、同じ長さで連続した期間どうしを並べ、前年同月を併記する。この4つを守るだけで、見かけの悪化の半分以上は消えます。
Google広告のヘルプにも「最近のパフォーマンスには、今後記録されるコンバージョンが含まれていませんが、その獲得に要する費用は反映されています」と書かれています。費用は即日乗り、成果は後から乗る。直近の数字が悪く見えるのは、仕様です。
この記事の要点
- 先週比が外れる原因は曜日構成・CVの反映遅れ・母数不足の3つ
- 比較は28日単位、終点は14日前、同じ長さで連続した期間どうしをそろえること
- 設定変更の前後比較は、変更日と学習期間を除いた区間で取る
- 季節商材は前年同月比が主、前月比は補助。
CVの二重計上など、計測のずれを見つけて直し方まで書いた診断の例をご覧いただけます。
サンプルを見る(無料・その場でダウンロード)1. 先週比が外れる3つの理由
曜日の問題から。BtoBの問い合わせは平日に集中し、ECの購入は週末に寄るので、「先週」を月曜から日曜で切れば曜日構成は同じですが、月初の3日間と月末の3日間のように日数が同じでも曜日が違う期間を比べると、それだけで2〜3割は動きます。祝日が1日入るだけで、BtoBの週次CVは2割減って見えることも珍しくありません。
反映遅れは、もっと見落とされます。CVはクリック日に遡って計上されます。クリックの翌週に問い合わせが来れば、先週の数字が今週になって増えるわけです。管理画面には「コンバージョンまでの日数」という分割(セグメント)があり、CVがクリックから何日後に発生したかを最大19区分で見られます。ここで7日以上が全体の3割を占める商材なら、直近7日のCVRは本来の7割程度にしか見えていません。コンバージョンの計測期間は初期設定で30日になっているので、理屈の上では先週のクリックに対するCVは、今から4週間後まで増え続けます。
この反映遅れは「月初に見た先月の数字が、月の半ばに見ると増えている」という形でも現れます。月次報告を月初の2営業日で作っている会社は、毎月少しずつ悪い数字を報告していることになります(報告の型は「1枚で済む月次報告」)。締めの取得日を「翌月10日」のように決めて社内で共有しておくと、この種のずれは騒ぎになりません。
そして母数です。週にCVが12件のアカウントで、翌週9件に減った。25%の減少に見えますが、この規模では偶然でも十分に起きる幅です(「判断に必要な件数」も参照)。計算してみます。クリック420件でCV12件ならCVR(コンバージョン率、クリックのうち成果に至った割合)は2.86%、クリック380件でCV9件なら2.37%。CPC(クリック単価)150円として費用は6万3,000円と5万7,000円、CPAは5,250円と6,333円です。ここに反映遅れのCVが2件乗って11件になると、CPAは5,182円。「20%悪化」が「1%改善」に変わります。
2. 比較期間の決め方:4つのルール
比較期間の設計に正解は1つではありませんが、外さないための型はあります。4つにまとめました。
| ルール | 具体的な取り方 | 防げるずれ |
|---|---|---|
| ①28日単位で区切る | 直近28日と、その前の28日。月(28〜31日)ではなく4週間で固定 | 曜日構成の差、月の長さの差 |
| ②終点を14日前に置く | 今日が10月13日なら、9月29日を終点にして28日遡る | CVの反映遅れによる直近の過小評価 |
| ③同じ長さ・連続した期間 | 管理画面の期間比較で「前の期間」を選ぶ。飛び石の期間は使わない | 間に挟まった変更の影響の混入 |
| ④前年同月を併記する | 期間比較で「前年の同じ期間」を選び、前月比と並べる | 季節要因を実力の変化と誤認すること |
①の28日は、曜日を4回ずつ含む最短の長さです。月で切ると2月は28日、10月は31日で、日数の差だけで費用が1割変わります。②の14日は、CVまでの日数が7日以内に収まる商材なら7日に縮めて構いませんし、住宅や法人向けのように検討が長い商材なら21日に延ばします。自社の「コンバージョンまでの日数」の分布を一度見て、9割のCVが収まる日数を終点のずらし幅にする。これが一番間違いが少ない決め方です。
③は管理画面の機能に沿います。Google広告では画面右上の期間を開き、比較を有効にすると「前の期間」「前年の同じ期間」「カスタム」から選べ、表には差分と変化率の列が追加されます。変化の原因候補を示してくれる機能は、比較する2つの期間が過去90日以内で、同じ長さで、連続している場合にしか使えません。ヘルプにそう書かれている以上、この条件が「比較として成立する最低ライン」だと考えてよいはずです。
④は忘れがちですが、効きます。前月比で2割落ちた月が、前年同月比では1割増だったという例は毎年どこかのアカウントで起きていて、どちらの数字を先に見るかで、その月に打つ手が「設定の見直し」から「何もしない」に変わります。前年のデータがない1年目のアカウントなら、Googleトレンドで主要キーワードの前年の動きを見るだけでも、季節の山谷の当たりは付けられます。
4つのルールを1枚にすると、毎週月曜に開く期間は「14日前を終点にした28日間と、その前の28日間、それに前年の同じ28日間」の3つで固定されます。設定するのは一度だけ。あとは同じ3つを開き続けるだけです。
3. 設定変更の前後は「変更日」で区切る
入札戦略を変えた、広告文を差し替えた、予算を上げた。その効果を見るときに、先週比の失敗がもう一度起きます。変更日をまたいだ28日を「前の28日」と比べても、前半は旧設定、後半は新設定が混ざった平均を見ているだけです。
取り方は3段階です。まず学習期間を外します。変更日を0日目として、0日目から7〜14日目までは学習期間として評価の対象から外す。自動入札は変更後に学習をやり直すので、この間の数字は新設定の実力ではありません(目安は「学習期間の目安」に書きました)。次に、学習期間が明けてから14日分を「後」として取る。最後に、変更日より前の同じ14日分を「前」として取り、曜日の並びをそろえる。前後それぞれ14日なら、曜日は2回ずつ含まれます。
さらに注意したいのは、変更が1つではない場合です。入札戦略と広告文を同じ週に変えたら、どちらが効いたかは誰にも分かりません。変更履歴を開いて比較したい区間に他の変更が入っていないかを先に確かめるのは、代理店に運用を任せている場合は特に、自分の知らない変更が週に何件も入っていることがあるからです。変更履歴の読み方は「変更履歴の見方」のとおりです。
この区切り方を守っても、母数の問題は残ります。前後14日でCVが各20件に満たないなら、前後の差が実力なのか偶然なのかの判定はまだできず、28日ずつ、56日ずつと延ばすしかありません。小さいアカウントほど、効果検証には時間がかかります。月のCVが30件のアカウントで月に3つの施策を試せば、1施策あたりのCVは10件。何が効いたかは永遠に分かりません。施策は1か月に1つ、が小規模アカウントの鉄則になる理由です。
4. 季節と外部要因:前年同月比の使い方
学習塾なら2月と3月、ECなら11月と12月、住宅なら春と秋と、年の中でCVの出方が倍半分で動く商材では、前月比だけを見ていると「9月に悪化した」が毎年起きます。前年同月比を並べれば、9月の落ち込みが例年どおりなのか、今年だけ深いのかが分かります。
前年同月比にも落とし穴があり、1年前と今では予算もキャンペーン構成も違うのが普通です。CV数やCPAの絶対値ではなく、CVRとCPCの「変化の方向」を見るほうが、構成が変わっていても読めます。前年9月はCVRが8月比で15%落ちていた、今年は30%落ちている。この差分が、季節以外の要因の大きさです。
GA4を併用しているなら、同じ期間で自然検索やSNS経由の流入も一緒に落ちていないかを見ます。全チャネルが同じ月に1〜2割落ちているなら需要そのものの変化で、広告だけが落ちているなら広告側の要因。確認に5分もかかりません。
外部要因は画面に出ません。競合が出稿を強めた、ニュースで需要が動いた、Googleの検索結果の見た目が変わった。オークション分析でインプレッションシェアの推移を見ると競合の動きは一部見えますし、需要の変化は検索語句の表示回数の推移で推測できます。それでも、自分のアカウントの数字だけを見ていると「自分の設定が悪かった」と解釈しがちで、実際には何も変えていないのに悪化している月は、外の要因を先に疑うべき月です。
ここまでの期間設計は、自分で決めて自分で守れます。守れないのは、自分の選んだ比較期間が「都合のよい切り方」になっていないかの判定で、成果が良く見える28日を無意識に選んでしまう傾向は、報告する側に立った人ほど強くなります。これは誠実さの問題ではなく、構造の問題です。自分で切った期間を自分で採点する限り、切り方の妥当性は検証されません。
※ 報告に使っている比較期間の切り方が妥当か、外の目で見てほしい方へ ― 読み取り専用の権限だけで確認できる月次診断があります。実際の診断レポートのサンプル(無料)で、期間設計がどう評価されるかをご覧ください。
5. 先週比を「見ない」のではなく「判断に使わない」
誤解のないように補足すると、先週比を見ること自体は止めません。計測が止まった、審査で広告が落ちた、予算が切れた。こうした事故は先週比どころか日次で見つけるべきで、CVが0件の日が2日続いたら期間設計を待たずに動きます。先週比は事故を見つける目であって、良し悪しを決める物差しではない。この使い分けです。
物差しとして使うのは28日単位・終点14日前・同じ長さで連続の期間で、週次の会議で聞かれたら「先週は12件、直近28日では前の28日比で8%増。先週分は反映遅れが残っているので確定値は再来週」と答える。言い方を決めておくだけで、週ごとに設定を触っては戻す悪循環は止まります。
期間の型を決め、変更日で区切り、前年同月を併記する。ここまでは管理画面と電卓があれば今日からできる作業です。一方で、その型で切り出した数字が「改善」を示しているときに、それが設定の効果なのか季節なのか競合の撤退なのかを切り分ける作業は、同じアカウントを毎週見ている人には最も難しい部分になります。見慣れた数字ほど、理由を探さなくなるからです。先週比は見てよい。決めるのは28日で切った数字で、その読みが合っているかの答え合わせは、毎週この画面を見ていない人と行う。比較期間の型は、この最後の一手まで含めて完成します。
※ 月1回、同じ型で切った数字を定点で評価してほしい方へ ― 今の運用体制はそのままで受けられます。実際の診断レポートのサンプル(無料)を用意しています。
よくある質問
Q. 上司に毎週「先週比でどうだった」と聞かれます。どう答えればいいですか?
A. 先週の実数と、28日単位の比較を並べて答える形に変えてみてください。「先週はCV12件。直近28日は前の28日比でCPAが6%改善。先週分は反映待ちのCVが残るので確定は2週間後」のように、事故の有無は週次で、良し悪しは28日で、と役割を分けて伝えると、聞く側も先週比だけで判断しなくなります。
Q. 変更の効果をもっと早く知る方法はありませんか?
A. 母数を増やす以外に近道はありません。CVの件数が少ないなら、CVより手前のクリック率や検索語句の変化を先に見る、または複数のキャンペーンを合算して見る、のどちらかです。それでも足りない場合は、1か月単位で判断する前提に切り替えるほうが、早く見ようとして誤った判断を重ねるより結果的に早く結論にたどり着きます。
この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。
実際のカルテ(サンプル)をその場でダウンロード
ご入力後、その場でサンプル(PDF・一部抜粋)をダウンロードできます。まず中身を見たい方向けです。
