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生成AIで作成した動画広告の編集画面を確認するマーケティング担当者のイメージ

AI動画広告の現在地:SoraとVeoで変わる制作費と運用

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AI動画広告の現在地:SoraとVeoで変わる制作費と運用

アドサプリ運営チーム2026.08.27
生成AIで作成した動画広告の編集画面を確認するマーケティング担当者のイメージ

2025年6月、米国のNBAファイナル中継で放映されたあるテレビCMが業界の話題をさらいました。予測市場サービスKalshiの30秒CMで、映像はGoogleの動画生成AIであるVeo 3で制作され、制作費は約2,000ドルだったと米eWeekなどが報じています。日本円で30万円ほど。従来なら制作だけで数千万円かかってもおかしくない全国放送のCM枠に、生成AIで作った映像がそのまま流れたわけです。映像はあえてAIらしい荒唐無稽な演出で構成され、それ自体が話題化の仕掛けにもなっていました。

この事例は極端に見えて、方向性としては例外ではありません。動画生成AIの品質向上と、広告媒体側の管理画面へのAI組み込みが同時に進み、「動画広告は制作費が高いから無理」という前提が崩れ始めています。この記事では、生成モデルの現在地、媒体側のAI機能、小予算の広告主にとって何が変わるのか、そして権利やブランド毀損といったリスクへの向き合い方を整理します。なお、Metaが掲げる広告運用全体の自動化構想はテーマが別なので、既存の解説記事に譲り、ここではクリエイティブ制作の実務に絞ります。

この記事の要点

  • 2025年6月には米国でVeo 3製のテレビCMが放映され、制作費約2,000ドルと報じられた。動画制作の価格の常識が崩れつつある
  • OpenAIのSora 2は2025年9月30日に公開。GoogleはVeoを広告の管理画面(Asset Studio)に組み込み、広告主が直接使える段階に入った
  • 小予算の広告主にとっては「動画1本の壁」が下がり、量産とテストを前提にした運用設計が可能になる
  • 学習データや肖像の権利、不自然な映像によるブランド毀損、媒体のAI開示ルールという3つのリスク管理が前提になる

1. 生成モデルの現在地:SoraとVeo

動画生成AIの代表格は、OpenAIのSoraとGoogleのVeoです。OpenAIは2025年9月30日にSora 2を公開し、同時に生成動画を投稿・閲覧できるアプリの提供を始めたと米TechCrunchなどが報じました。音声付きの動画生成と物理挙動の自然さが向上し、テキスト指示から広告に使える水準のカットが出せる場面が増えています。GoogleのVeoも世代を重ね、前述のKalshiのCMのように、実写風の映像を短時間で量産する用途で使われ始めました。このほかRunwayやKlingなど選択肢は多く、月数千円から数万円の利用料で試せるのが相場感です。

とはいえ「プロンプトを打てばCMが完成する」わけではありません。実務では、生成AIが得意なのは素材カットの量産であり、構成・コピー・編集は依然として人の仕事です。Kalshiの事例も、AIに丸投げしたのではなく、プロンプトを設計する制作者が試行錯誤を重ねて仕上げたと伝えられています。制作費の内訳が「撮影機材とロケ」から「設計する人の時間」へ移った、と捉えるのが正確です。

現時点の限界も知っておく必要があります。生成できる尺は1カットあたり数秒から十数秒が中心で、長尺の一貫したストーリーはカットをつないで編集する前提です。同じ人物やキャラクターを複数カットで安定して登場させる制御も発展途上で、ブランドの顔となるタレントやマスコットを軸にした表現には向きません。商品の描写は要注意です。実在の商品をAIに描かせると、ロゴや形状が微妙に違う「うちの商品に似た何か」が出てきます。実務では、商品カットは実写素材を使い、背景やイメージシーンを生成で賄うハイブリッドが定番になっています。

2. 媒体側のAI生成機能:管理画面の中にAIが入った

もう1つの大きな変化は、広告媒体そのものがAI生成機能を管理画面に組み込み始めたことです。2026年5月に開催されたGoogle Marketing Liveでは、広告クリエイティブを制作するAsset StudioにGeminiとVeoを統合し、ブランドのトーンや訴求の指針を登録してAIに広告案を作らせるAI Briefという機能が発表されたと、米WordStreamなどの業界メディアがまとめています。広告主が外部ツールで動画を作って入稿するのではなく、Google広告の中で素材から動画を生成し、そのまま配信・テストまでつながる流れです。

Metaも同様に、画像から動画を生成したり既存素材のバリエーションを自動生成したりする機能をAdvantage+の枠組みで広げています。TikTokにも生成AIを使った制作支援の仕組みがあります。話は利便性で終わりません。媒体は「どのクリエイティブが成果を出すか」の配信データを持っているため、生成と検証のループが管理画面の中で閉じるようになります。クリエイティブ制作が、代理店や制作会社への発注業務から、運用業務の一部へと吸収されていく方向です。

3. 小予算の広告主に何が変わるか

この変化の恩恵を最も受けるのは、実は大手ではなく小予算の広告主だと考えています。理由は単純で、これまで動画広告への参入を阻んでいたのが「1本あたりの制作費」だったからです。外注すれば1本数十万円、社内で作れば担当者の週末が消える。月の広告費が50万円の会社にとって、その投資は割に合いませんでした。

生成AIと媒体側の機能を使うと、この壁が下がります。商品写真数枚から動画を起こす、静止画バナーの勝ちパターンを動画化する、訴求違いのバリエーションを5本作って配信テストにかける。いずれも追加費用がほぼかからない作業になりつつあります。動画枠(YouTubeやショート動画面、Demand Genなど)は静止画枠よりも競争が緩い場面があり、「動画が用意できないから出せなかった面」に出られるようになること自体が、小予算広告主にとっての実利です。

始め方の順序も提案しておきます。①まず既存の静止画広告で反応が取れている訴求を1つ選ぶ、②その訴求を15秒前後の動画にAIで起こす(媒体内の生成機能か、低価格の生成ツールで十分です)、③既存キャンペーンの配信面を広げるか小額の動画キャンペーンを足して、CPA(CV1件あたりにかかった広告費)を静止画と比較する。凝った映像を目指すより、検証の回転数を上げることに価値を置くのが、AI時代の動画広告の入り方です。

費用感の目安も置いておきます。15〜30秒の広告動画について、従来の外注と生成AIの活用を並べると次のようになります。

観点 制作会社への外注 生成AIの活用
費用の相場観 簡易なもので1本10万〜30万円、撮影を伴えば50万円超 ツール利用料が月数千円〜数万円と、担当者の作業時間
1本あたりの単価 本数に比例して制作費が積み上がる 月3万円のツール代で毎月5本回せるなら1本1万円を切る
向く用途 ブランドの世界観を担うキービジュアル、出演者ありの制作 配信テスト用のバリエーション量産、少額で試す最初の動画

この差が意味するのは単なる節約ではなく、「外したときの傷が浅いから、当たるまで試せる」というテスト設計の自由度です。動画広告の勝率は静止画同様に打席数に依存するため、1本に賭ける構造から、10本試して2本残す構造への転換こそが本質的な変化だと考えています。

4. リスク:権利・ブランド毀損・開示ルール

ここまでの話には裏面があります。3つに分けて押さえてください。

リスク1:権利関係

生成AIの学習データを巡っては、各国で権利者との係争や制度整備が続いています。生成物が既存の作品や実在の人物・ロゴに似てしまう可能性はゼロにできず、特に実在人物の顔や声を模した映像は、肖像やパブリシティの観点で重大な問題になり得ます。商用利用の可否はツールごとの利用規約で異なるため、利用規約の確認と、生成物の目視チェック(似すぎているものは使わない)を制作フローに組み込む必要があります。判断に迷う案件は法務や専門家への確認を挟んでください。

リスク2:ブランド毀損

指が6本ある手、不自然に溶ける文字、どこか不気味な人物。生成AIの失敗映像はSNSで格好のネタになります。また、技術的に破綻がなくても「AIで済ませた」という印象自体が反発を招くことがあります。2024年の年末には、コカ・コーラがAI生成を使ったクリスマスCMを公開して賛否両論が起きたと広く報じられました。世界的ブランドですらこの扱いなのですから、生活者のAI生成への視線は決して甘くありません。効率化の文脈でAIを使うほど、ブランドの体温が下がって見えるリスクがある。全部をAIにするのではなく、どこを人の手に残すかを決めておくことが、実務的な防衛線になります。

リスク3:媒体のAI開示ルール

媒体側はAI生成コンテンツの扱いを明確化してきています。YouTubeは2024年から、実在の人物や出来事と誤認させうる合成・改変コンテンツについて、投稿時の開示を求める仕組みを導入しました。TikTokやMetaにもAI生成コンテンツへのラベル表示の仕組みがあります。広告での具体的な要件は媒体・時期によって変わるため、配信前に各媒体の最新ポリシーを確認する運用にしておくのが安全です。開示すれば済む話を怠って配信停止や炎上につながるのは、最も割に合わない失敗です。

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リスクの話をまとめると、AI動画広告の巧拙は「生成の上手さ」よりも「チェック体制の有無」で差がつきます。生成→目視確認→権利チェック→開示設定→少額配信→拡大。この順序を型にしてしまえば、小さな会社でも安全に回せます。

チェック項目は難しいものではありません。実在の人物・ロゴ・作品に似ていないか、手指や文字に破綻がないか、表現が事実と食い違っていないか(生成映像は演出が過剰になりがちで、商品の効果を実際以上に見せてしまうと景品表示法の問題になります)、そして媒体の開示設定を済ませたか。A4で1枚のチェックリストを作り、配信前に2人の目を通す。それだけで、AI起因の事故の大半は防げるはずです。

最後に展望です。媒体の管理画面へのAI統合が進めば、「動画を生成できること」自体は数年で差別化要因ではなくなります。全員が同じ道具を持ったとき、差がつくのは、自社の顧客が何に反応するかという理解の深さと、生成物を評価して選ぶ目、そして検証を回し続ける運用体制です。道具の進化は速いので、特定のツールに習熟するより、「安く速く作れる前提で広告の検証をどう設計し直すか」という問いを社内に持つことです。ただ、その問いに答えるには現在地が要ります。いま自社のどのクリエイティブが効いていて、静止画と動画のどちらに伸びしろが残っているのか。ここは配信データの読み方次第で結論が逆にもなる部分で、しかも自社の実績を自社で採点すると、解釈はどうしても都合のよいほうへ寄ります。生成の道具を増やす前に、その土台を外の目で一度点検しておくと、AIで作る1本目の置き場所が決まります。

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よくある質問

Q. AIで作った動画広告は、媒体の審査で不利になりますか?

A. AI生成であること自体を理由に審査で落とす媒体は、主要どころでは現状ありません。審査で問題になるのは、生成手段ではなく中身です。誇大な表現、誤認を招く演出、権利物の無断使用は、人が作っても落ちます。ただし実在の人物や出来事と誤認させうる映像は開示義務の対象になり得るため、各媒体のAIコンテンツポリシーの確認だけは配信前に行ってください。

Q. 制作会社への外注はもう不要になるのでしょうか?

A. 用途によります。配信テスト用のバリエーション量産や、少額で試す最初の動画は、内製とAIで十分賄える場面が増えました。一方で、ブランドの世界観を担うキービジュアルや、権利処理を伴う出演者ありの制作は、引き続き専門家の領域です。「テスト用はAIで量産し、勝ち筋が見えたら投資して作り込む」という二段構えが、予算の限られた広告主には現実的です。

この記事の執筆者:アドサプリ運営チーム(運営:ライムクロス株式会社)。現役の広告運用者が、月次の広告アカウント診断「アドサプリ」を提供しています。

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